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みずからの鍵を切断する鍵穴

A lock that cuts its own key

Editor's Choice

Sci. Signal. 30 Aug 2016:
Vol. 9, Issue 443, pp. ec196
DOI: 10.1126/scisignal.aai8870

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

R. Yao, Z. Ming, L. Yan, S. Li, F. Wang, S. Ma, C. Yu, M. Yang, L. Chen, L. Chen, Y. Li, C. Yan, D. Miao, Z. Sun, J. Yan, Y. Sun, L. Wang, J. Chu, S. Fan, W. He, H. Deng, F. Nan, J. Li, Z. Rao, Z. Lou, D. Xie, DWARF14 is a non-canonical hormone receptor for strigolactone. Nature 536, 469-473 (2016). [PubMed]

A. de Saint Germain, G. Clavé, M.-A. Badet-Denisot, J. P. Pillot, D. Cornu, J.-P. Le Caer, M. Burger, F. Pelissier, P. Retailleau, C. Turnbull, S. Bonhomme, J. Chory, C. Rameau, F.-D. Boyer, An histidine covalent receptor and butenolide complex mediates strigolactone perception. Nat. Chem. Biol. 10.1038/nchembio.2147 (2016). [PubMed]

K. C. Snowden, B. J. Janssen, Signal locked in. Nature 536, 402-404 (2016). [PubMed]

要約

原則として、リガンドは対応する受容体に非共有的に結合し、受容体のコンホメーション変化を誘導して、受容体を活性化させるか、受容体が結合バートナーと相互作用できるようにする。Yaoらおよびde Saint Germain らは、α/βヒドロラーゼDWARF14(D14)がストリゴラクトン受容体であり、このまれな受容体は、リガンドを加水分解するだけでなく、修飾されたリガンドとの共有結合も形成することを報告している。ストリゴラクトンは、カルテノイド由来の植物ホルモンで、多くの発生過程を調節し、寄生植物の発芽を誘発する。ストリゴラクトンによって誘発される分子過程の一つが、D14のプロテアソーム分解である。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana 、Yaoら)、エンドウマメ(Pisum sativum、de Saint Germainら)、イネ(Oryza sativa、de Saint Germainら)のD14のオルソログは、生物学的に活性なストリゴラクトンを加水分解し、加水分解生成物の一つと共有結合した。J自身の分解を促進するタンパク質2つと形成された複合体におけるArabidopsis D14(AtD14)の構造解析を通じて、Yaoらは、ストリゴラクトン加水分解生成物との共有結合により、AtD14にコンホメーション変化が生じ、AtD14が結合パートナーと相互作用できるようになることを見出した。Arabidopsis d14-5 変異体は、ストリゴラクトンシグナル伝達の障害に特徴的な表現型を示す。この変異体は、AtD14に単一アミノ酸置換をもち、ストリゴラクトン誘導性のコンホメーション変化に関与する構造的特徴に影響を及ぼすことが予測された。この変異は、AtD14の酵素活性には影響を及ぼさず、AtD14が結合パートナーのひとつと相互作用することを妨げた。de Saint Germainらは、生物学的に活性ではないストリゴラクトンアナログが、D14のエンドウマメオルソログであるRMS3によって加水分解されるが、その生成物は受容体と安定的に結合しないことを見出し、この結果は加水分解生成物の共有結合が、ストリゴラクトンシグナル伝達に重要であるという考えを支持した。D14のエンドウマメオルソログの反応速度解析による結果は、それぞれのRMS3分子が触媒を1回のみ行うことと矛盾しなかった。これらの結果から、リガンド‐受容体間相互作用の新たなパラダイムが示されており、それぞれのストリゴラクトンはどのようにして異なる反応を引き出すことができるのか、受容体はin vivoでシングルターンオーバー酵素として機能するのかなどの、さらなる疑問が数多く生まれている(SnowdenとJanssenを参照)。

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2016年8月30日号

Editor's Choice

みずからの鍵を切断する鍵穴

Research Article

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