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概日性は免疫応答に影響する

Circadian effects on immunization responses

Editor's Choice

Sci. Signal. 06 Dec 2016:
Vol. 9, Issue 457, pp. ec285
DOI: 10.1126/scisignal.aal5222

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

K. Suzuki, Y. Hayano, A. Nakai, F. Furuta, M. Noda, Adrenergic control of the adaptive immune response by diurnal lymphocyte recirculation through lymph nodes. J. Exp. Med. 213, 2567-2574 (2016). [PubMed]

要約

適応免疫系の一環として、リンパ球は抗原探索の際にリンパ節を通過する。その後、リンパ液中に入り、再び血液中に移行した後、他のリンパ節経由で戻って再利用されるか、組織内に輸送されて免疫応答を媒介する。好中球や単球のような自然免疫系の細胞では、血液から組織への移入に概日性の調節が認められることから、Suzukiらは、明期12時間、暗期12時間の明暗周期下で飼育されたマウスにおけるリンパ球輸送を調べた。以前の研究では、リンパ組織のアドレナリン作動性神経から放出されるノルアドレナリンによってT細胞上のβ2アドレナリン作動性受容体(β2AR)が刺激されると、リンパ節におけるT細胞の滞留を促進する2つのケモカイン受容体(CCR7、CXCR4)の応答性が高まることが示された。著者らは、マウスの血中のB細胞数、CD4+ T細胞数、CD8+ T細胞数が明期開始から5時間で最大になり、消灯の約1時間後に減少することを見出した。対照的に、末梢リンパ節のリンパ球数は暗期開始から1〜5時間後に最大になった。リンパ節内のノルアドレナリン量も暗期に最大となった。アドレナリン作動性神経を枯渇させる神経毒6-OHDAを投与されたマウスでは、暗期にリンパ節におけるリンパ球数の増加がみられなかった。さらに、野生型マウスに移植されたβ2AR欠損型リンパ球ではリンパ節輸送の概日性調節はみられなかった。抗原NP-CGGに特異的な抗体の濃度は、暗期開始から5時間後に免疫化されたマウスにおいて、明期開始から5時間後に免疫化されたマウスよりも高かったことから、暗期のリンパ節におけるリンパ球数の増加によって抗原に対する免疫応答が促進されたことが示唆される。明期と暗期の免疫化にみられるこのような抗体産生の差異は、6-OHDA処理されたマウスまたはβ2AR欠損型マウスでは消失した。これらのデータは、リンパ節を経由するリンパ球輸送のアドレナリン作動性神経による調節が抗体に基づく免疫応答の強度を決定していることを示しており、これらの知見は、臨床でのワクチン接種との関連で治療上有益である可能性がある。

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