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新たなつながり:複数の経路で血管完全性を調節する

New connections: Multiple paths control vascular integrity

Editor's Choice

Sci. Signal. 31 Jan 2017:
Vol. 10, Issue 464,
DOI: 10.1126/scisignal.aam8349

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

L. Roth, C. Prahst, T. Ruckdeschel, S. Savant, S. Weström, A. Fantin, M. Riedel, M. Héroult, C. Ruhrberg, H. G. Augustin, Neuropilin-1 mediates vascular permeability independently of vascular endothelial growth factor receptor-2 activation. Sci. Signal. 9, ra42 (2016).
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R.N. Sewduth, H. Kovacic, B. Jaspard-Vinassa, V. Jecko, T. Wavasseur, N. Fritsch, M. Pernot, S.Jeaningros, E. Roux, P. Dufourcq, T. Couffinhal, C. Duplàa, PDZRN3 destabilizes endothelial cell-cell junctions through a PKCζ-containing polarity complex to increase vascular permeability. Sci. Signal. 10,eaag3209 (2017).
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2つの研究によって、病的な血管透過性を予防するための新たな標的が同定された。

要約

相互結合して血管内部を覆う内皮細胞は、血液と組織の間のバリアとして機能する。血管透過性は内皮細胞間の接合部の完全性によって決定され、受容体VEGFR-2とその共役受容体であるNRP1によって活性化される経路など、複数のシグナル伝達経路によって調節される。血管漏出は、感染と闘うために白血球を血管外漏出させる場合など、状況によっては必要だが、過剰な漏出は浮腫や細胞の不適切な動き(がん細胞の血液中への転移など)を促進することがある。Science Signaling誌に掲載された2報の論文は、血管透過性を調節する経路に関する新たな洞察を明らかにし、この過程をコントロールするための薬物の開発に示唆を与えている。

Rothらは、NRP1のクラスター形成を引き起こす複数の異なるリガンドが、VEGFR-2の活性化を介さずに血管透過性を上昇させることを明らかにした。細胞質ドメイン欠損型NRP1を有するトランスジェニックマウスを用いた実験によって、このドメインがNRP1のクラスター形成を刺激して血管からの漏出を促進させるために必要であることを示した。これまでの薬物は大半がVEGFR依存性経路を標的にしたものであったことから、これらの結果は、病的な血管透過性を低下させ、がん細胞の転移を減少させる治療法の開発に示唆を与えるものであり、今後は、VEGFRに依存しない経路も視野に入れなければならない。

過剰な血管漏出は、組織での水分蓄積も引き起こす。脳卒中患者では、脳内に水分が過剰に蓄積されて回復不能な損傷が引き起こされる場合がある。Sewduthらは、E3ユビキチンリガーゼPDZRN3が内皮細胞間の接合部を不安定化し、血管透過性を上昇させることを見出した。成体マウスのPDZRN3の遺伝子を破壊すると、脳卒中後に発生する脳浮腫が軽減された。この作用は、内皮細胞間の接合部を不安定化するキナーゼPKCζの薬理学的阻害薬によって模倣された。これらの結果は、PDZRN3またはその下流エフェクターPKCζを阻害することによって、脳卒中後に発生する病的な浮腫を予防できる可能性を示している。

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2017年1月31日号

Editor's Choice

新たなつながり:複数の経路で血管完全性を調節する

Research Article

TFEBは内皮細胞の炎症を阻害してアテローム性動脈硬化症を抑制する

PDZRN3はPKCζ含有極性複合体を介して内皮細胞間接合部を不安定化させ血管透過性を増加させる

AMPKはエピジェネティック因子であるDNMT1、RBBP7およびHAT1のリン酸化によりミトコンドリアの生合成と機能を促進する

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