嗅覚による代謝調節

Olfactory control of metabolism

Editor's Choice

Sci. Signal. 25 Jul 2017:
Vol. 10, Issue 489, eaao4413
DOI: 10.1126/scisignal.aao4413

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

C. E. Riera, E. Tsaousidou, J. Halloran, P. Follett, O. Hahn, M. M. A. Pereira, L. E. Ruud, J. Alber, K. Tharp, C. M. Anderson, H. Brönneke, B. Hampel, C. D. M. Filho, A. Stahl, J. C. Brüning, A. Dillin, The sense of smell impacts metabolic health and obesity. Cell Metab. 26, 198-211.e5 (2017). Google Scholar

マウスでは、嗅覚ニューロンの活性化によって脂肪蓄積とインスリン抵抗性が亢進される。

要約
食物の匂いは、風味を知覚するうえで重要であり、唾液と胃酸の分泌増加など、食事に向けて体を準備する生理反応を引き起こす。Rieraらは、嗅覚が代謝にも影響することを報告している。幼若期にジフテリア毒素による処置により嗅覚ニューロン(OSN)を選択的に除去されたOMPDTRマウスでは、高脂肪食(HFD)を与えても野生型マウスほどの体重増加はみられず、対照マウスに比べて耐糖能とインスリン感受性に改善がみられた。体重の差は体脂肪量の減少が原因であり、除脂肪体重は両群で同程度であった。驚くべきことに、HFDが原因ですでに肥満であったマウスでも、OSNを除去すると体脂肪量が減少し、HFDを継続してもさらなる体重増加は予防された。OMPDTRマウスは、同腹の対照マウスに比べてHFDの節食量はわずかに少なかったが、運動量が対照マウスより多いということはなく、栄養吸収にも異常は認められなかった。その代わり、OMPDTRマウスでは、酸素消費量とエネルギー消費量が、特に褐色脂肪組織と皮下脂肪でより多かった。OMPDTRマウスの脂肪組織では、交感神経系による脂肪細胞への刺激の亢進が原因で、熱産生が増加していた。嗅上皮でのインスリンシグナル伝達が抑制されるように遺伝子組み換えされたマウスでは、嗅覚の感度(隠された餌や尿を見つけ出す能力の高さによって測定)が向上していた。このような高嗅覚マウスは、正常食を維持しても、対照マウスと比べて体脂肪量が多く、インスリン抵抗性が高く、肝臓でのグルコース産生が低下していた。このように嗅覚系は、単純に食欲に影響するだけでなく、代謝にも影響する。OSNによる自律神経系への刺激が代謝変化を誘発する正確な機構はまだ特定されていないが、今回の研究で得られたエビデンスから、これらの反応は、神経ペプチドAgRP、POMCを産生するニューロンによって媒介される可能性が示唆されている。

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2017年7月25日号

Editor's Choice

嗅覚による代謝調節

Research Article

脂肪組織のナトリウム利尿ペプチドシグナル伝達を増強させると食餌誘発性肥満およびインスリン抵抗性を予防するが、筋肉ではそのような効果はみられない

グルココルチコイド-Angptl4-セラミド軸はPP2AおよびPKCζを介してインスリン抵抗性を誘導する

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