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エキソソームによるインスリン感受性の調整

Tuning insulin sensitivity by exosome

Editor's Choice

Sci. Signal. 17 Oct 2017:
Vol. 10, Issue 501, eaar2046
DOI: 10.1126/scisignal.aar2046

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

W. Ying, M. Riopel, G. Bandyopadhyay, Y. Dong, A. Birmingham, J. B. Seo, J. M. Ofrecio, J. Wollam, A. Hernandez-Carretero, W. Fu, P. Li, J. M. Olefsky, Adipose tissue macrophage-derived exosomal miRNAs can modulate in vivo and in vitro insulin sensitivity. Cell 171, 372-384 (2017).
Google Scholar

脂肪組織のマクロファージは、インスリン感受性を調節するマイクロRNAを含むエキソソームを放出する。

要約

肥満はしばしば、2型糖尿病に至る可能性があるインスリン抵抗性を引き起こし、また、脂肪組織における炎症性マクロファージの蓄積と関連している。Yingらは、脂肪組織マクロファージ(ATM)が、マイクロRNAを含むエキソソームを通して全身のインスリン感受性を制御していることを見出した。共培養試験から、ATMから放出された骨髄細胞特異的マイクロRNAを含むエキソソームを、3T3-L1脂肪細胞が取り込むことが明らかにされた。正常餌が給与されている痩せたマウスに、肥満マウスのATM由来エキソソームを注入したとき、これは筋、肝臓および脂肪組織に取り込まれた。この痩せたマウスには耐糖能障害およびインスリン抵抗性が発現し、マイクロRNA依存性のインスリンシグナル伝達の阻害が認められた。反対に、痩せたマウスからのATM由来エキソソームを注射した肥満マウスでは、耐糖能およびインスリン耐性が正常化した。食餌誘発性肥満は、ATMにより産生されたエキソソーム中の種々のマイクロRNAの存在量を変化させた。特にこれは、炎症性マクロファージにより放出され、脂質および糖代謝に関与する転写因子であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)を標的とする、miR-155の存在量を増加させた。miR-155の過剰発現はさまざまな細胞種においてグルコースの取り込みを低下させ、インスリンシグナル伝達を遮断し、PPARγの存在量を減少させた。さらに、miR-155ノックアウトマウスは野生型マウスに比べ、高脂肪食が給与されたときに発現する耐糖能障害およびインスリン抵抗性の程度が低かった。このような保護作用は、放射線照射後のmiR-155ノックアウトマウスを野生型マウスの骨髄細胞で再構築した場合に回復した。これらの結果は、ATMが、インスリン感受性に影響を与えるマイクロRNAを含むエキソソームを放出し、しかもmiR-155は肥満に伴い生じるインスリン抵抗性に寄与することを示唆している。ただし、著者らは、miR-155に加えて、エキソソームを介して放出される他のマイクロRNAも、インスリン感受性の調節に寄与している可能性があることを述べている。

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2017年10月17日号

Editor's Choice

エキソソームによるインスリン感受性の調整

Research Article

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