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新たなつながり:DNA修復の脆弱性を操作してがんを治療する

New connections: Engineering DNA repair vulnerability to treat cancer

Editor's Choice

Sci. Signal. 19 Jun 2018:
Vol. 11, Issue 535, eaau4685
DOI: 10.1126/scisignal.aau4685

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

B. Cánovas, A. Igea, A. A. Sartori, R. R. Gomis, T. T. Paull, M. Isoda, H. Pérez-Montoyo, V. Serra, E. González-Suárez, T. H. Stracker, A. R. Nebreda, Targeting p38α increases DNA damage, chromosome instability, and the anti-tumoral response to taxanes in breast cancer cells. Cancer Cell 33, 1094-1110.e8 (2018).
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L. Li, S. Karanika, G. Yang, J. Wang, S. Park, B. M. Broom, G. C. Manyam, W. Wu, Y. Luo, S. Basourakos, J. H.Song, G. E. Gallick, T. Karantanos, D. Korentzelos, A. K. Azad, J. Kim, P. G. Corn, A. M. Aparicio, C. J. Logothetis,P. Troncoso, T. Heffernan, C. Toniatti, H.-S. Lee, J.-S. Lee, X. Zuo, W. Chang, J. Yin, T. C. Thompson, Androgen receptor inhibitor-induced "BRCAness" and PARP inhibition are synthetically lethal for castration-resistant prostate cancer. Sci. Signal. 10, eaam7479 (2017).
Abstract/FREE Full TextGoogle Scholar

N. Clarke, P. Wiechno, B. Alekseev, N. Sala, R. Jones, I. Kocak, V. E. Chiuri, J. Jassem, A. Fléchon, C. Redfern, C.Goessl, J. Burgents, R. Kozarski, D. Hodgson, M. Learoyd, F. Saad, Olaparib combined with abiraterone in patients with metastatic castration-resistant prostate cancer: A randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial. Lancet Oncol. S1470-2045(18)30365-6 (2018).
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DNA修復を阻害する薬剤が、一般的な治療に対するがんの感受性を広げる。

要約

がんは不均一な疾患であり、治療抵抗性がよくみられる。現在承認されている治療の効果を高める方法を見出すことが望まれる。p38αマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路によるシグナル伝達は、細胞増殖を促進し、一部のがんモデルにおいては、p38αの阻害によって腫瘍増殖が抑制される。Cánovasらは、患者に新たな治療機会をもたらす可能性のある、乳がん細胞におけるp38αのさらなる役割を報告している。マウスと培養細胞における遺伝子欠失および抑制試験によって、p38αはDNA損傷応答を調整し、DNAエンドヌクレアーゼと二重鎖切断(DSB)修復タンパク質CtIPをリン酸化することによって、染色体不安定性を制限することが明らかになった。そのため、p38α阻害剤は、DNA修復欠損を引き起こすことによって、自然発生乳腺腫瘍および患者由来異種移植片を有するマウスにおいて、一般的に用いられるタキサン系化学療法の効果を高めた。Archivesでは、Liらが、DNA修復欠損を発生させ、承認されているが効果のない治療を増強する方法のもう1つの例を示していた。著者らは、アンドロゲン受容体阻害剤エンザルタミドが、ポリ(ADP)リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤オラパリブに対する去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)の感受性を高めることを見出した。アンドロゲン受容体阻害剤はCRPCに無効であり、PARP阻害剤は通常、BRCA変異腫瘍またはそれ以外に相同組換え(HR)が欠損した腫瘍にのみ有効である。しかし、CRPC異種移植片を有するマウスを、エンザルタミドで前処理すると、BRCAを含むHR関連遺伝子の発現が低下した結果、HR欠損表現型が生じ、続くPARP阻害剤での処理により合成致死が可能になった。これらの結果とそれらの臨床的有用性は、Clarkeらが報告した第II相試験によって裏付けられている。同試験では、転移性CRPC患者において、アンドロゲン経路阻害剤アビラテロンとオラパリブの併用療法により、アビラテロン単独の場合と比較して生存が改善した。したがって、腫瘍細胞においてDNA修復欠損を引き起こす方法を見付け出すことで、それらの細胞を殺傷するわれわれの能力が向上する可能性があるだけでなく、現在用いられている、PARP阻害剤などの、腫瘍型が限定された薬剤の用途が広がる可能性もある。

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2018年6月19日号

Editor's Choice

新たなつながり:DNA修復の脆弱性を操作してがんを治療する

Research Article

PARP12はPARPに依存してウイルスタンパク質NS1、NS3を分解することによってジカウイルス感染症を抑制する

感覚ニューロンのMrgC11とµ-オピオイド受容体のオリゴマー形成がモルヒネ鎮痛を増強する

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