日光は頭によい

Sunshine for your mind

Editor's Choice

Sci. Signal. 03 Jul 2018:
Vol. 11, Issue 537, eaau6107
DOI: 10.1126/scisignal.aau6107

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

H. Zhu, N. Wang, L. Yao, Q. Chen, R. Zhang, J. Qian, Y. Hou, W. Guo, S. Fan, S. Liu, Q. Zhao, F. Du, X. Zuo, Y. Guo,Y. Xu, J. Li, T. Xue, K. Zhong, X. Song, G. Huang, W. Xiong, Moderate UV exposure enhances learning and memory by promoting a novel glutamate biosynthetic pathway in the brain. Cell 173, 1716-1727.e17 (2018).
Google Scholar

L. Chantranupong, B. L. Sabatini, Sunlight brightens learning and memory. Cell 173, 1570-1572 (2018).
Google Scholar

適度の紫外線曝露は脳内のグルタミン酸合成を刺激し、学習と記憶を改善する。

要約

高線量の紫外線(UV)照射は皮膚の炎症、損傷、がんを促進するが、低線量の照射は炎症を軽減させることから、一部の皮膚疾患の治療目的で臨床的に使用されている。適量の日光への曝露は、ビタミンDの生合成を刺激するだけでなく、気分、認知、学習を向上させる(Chantranupong and Sabatini参照)ので、有益である。Zhuらは、剃毛マウスに適量のUVBを照射させると、皮膚、血中、脳内のウロカニン酸(UCA)量が増加することを見出した。UCAは、末梢組織におけるヒスチジンからグルタミン酸への変換過程で生じる中間体である。UV曝露後の脳内では、UCAだけでなく、ヒスチジン、グルタミン酸、ヒスチジンからグルタミン酸への変換過程で生じる他の2つの中間体の量も増加していた。ヒスチジンからグルタミンへの生合成は末梢組織のみで起こると考えられていたが、この変換を媒介する酵素はさまざまな脳領域のニューロンに存在し、脳切片由来のニューロンはin vitroでヒスチジンからグルタミン酸を合成した(グルタミン酸は重要な興奮性神経伝達物質であるが、中枢神経系のニューロンは、血液脳関門を介した能動輸送によってグルタミン酸を獲得するか、グルタミンからグルタミン酸を合成するのが通常である)。UV曝露は、脳内のグルタミン生合成とグルタミン酸作動性シナプス伝達を刺激し、運動学習試験と認知記憶試験の成績を改善させた。このように日光は、エンドルフィンの放出を刺激することによって気分を高めるだけでなく、脳内のグルタミン酸シグナル伝達を亢進させることによって学習と記憶を促進する。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2018年7月3日号

Editor's Choice

日光は頭によい

Research Article

アセチルトランスフェラーゼNAT10の阻害はトランスポーチン-1核内輸送経路の再均衡化により早老症細胞と老化細胞を正常化する

Tomosynは肥満細胞脱顆粒においてPKCδ調節性融合クランプとして機能する

ヒト、ニワトリ、ワニ、カエル、ゼブラフィッシュのミネラルコルチコイド受容体の進化:ステロイド特異性へのアロステリックな影響

Research Resources

ラット皮質ニューロンにおけるS-ニトロシル化核タンパク質のプロテオミクス解析

最新のEditor's Choice記事

2024年4月9日号

伸張を感知して食欲を抑える

2024年4月2日号

アルツハイマー病に関連する脂肪滴

2024年3月26日号

傷つけるのではなく助けるようにミクログリアにバイアスをかける

2024年3月19日号

痒みを分極化する

2024年3月12日号

抗体の脂肪への蓄積による老化