複合体IIIによる免疫抑制

Immune suppression with complex III

Editor's Choice

Sci. Signal. 29 Jan 2019:
Vol. 12, Issue 566, eaaw7886
DOI: 10.1126/scisignal.aaw7886

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

S. E. Weinberg, B. D. Singer, E. M. Steinert, C. A. Martinez, M. M. Mehta, I. Martínez-Reyes, P. Gao, K. A. Helmin, H.Abdala-Valencia, L. A. Sena, P. T. Schumacker, L. A. Turka, N. S. Chandel, Mitochondrial complex III is essential for suppressive function of regulatory T cells. Nature 565, 495-499 (2019).
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制御性T細胞におけるミトコンドリア複合体IIIの欠損は、その生存に影響することなくその抑制活性を低下させる。

要約

制御性T細胞(Treg細胞)はエフェクターT細胞の活性を抑制し、それにより自己免疫を抑制している。Treg細胞はそのエネルギー所要量のために、他のエフェクターCD4+ T細胞サブセットと比べミトコンドリア呼吸に大きく依存している。Weinbergらは、ミトコンドリア複合体IIIの必須構成要素であるRieske鉄硫黄タンパク質(RISP)をTreg細胞特異的に欠失したマウス(RISP KOマウス)を作製した。RISP KOマウスは対照マウスと比べ、ミトコンドリア呼吸が低下して解糖代謝が亢進し、出生後4週間以内に全身性炎症のため死亡した。RISP KOマウスのTreg細胞数は対照マウスと同程度であったものの、RISP KO Treg細胞ではin vivoおよびin vitroにおける抑制活性が損なわれていた。タモキシフェン誘導性の、Treg細胞特異的な複合体IIIサブユニットQPCを欠失するマウス(QPC iKOマウス)も、正常なTreg細胞数であったにもかかわらず全身性炎症疾患を呈した。Treg細胞の特徴である重要な転写調節因子タンパク質FOXP3の安定性に対して、QPCの欠失は影響していなかった。B16メラノーマ細胞は、野生型マウスに注入されたとき腫瘍を形成したが、タモキシフェン処理後のQPC iKOマウスでは形成しなかった。このことは、in vivoにおけるTreg細胞の抑制機能にミトコンドリア呼吸が重要であることを示唆している。DNAメチル化とRNAシーケンシング解析から、ミトコンドリア複合体IIIを欠損している細胞において、DNAの過剰メチル化と、Treg細胞機能と関連する遺伝子の発現低下の関連性が示された。しかし、Foxp3をはじめとする標準的Treg細胞遺伝子の発現は影響されなかった。まとめるとこれらのデータは、Treg細胞はその抑制機能に必要な遺伝子の発現を維持するために、ミトコンドリア複合体IIIを必要とすることを示唆している。

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2019年1月29日号

Editor's Choice

複合体IIIによる免疫抑制

Research Article

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