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適切な時と場所でcGASを活性化する

Activating cGAS at the right time and place

Editor's Choice

Sci. Signal. 26 Mar 2019:
Vol. 12, Issue 574, eaax4336
DOI: 10.1126/scisignal.aax4336

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

K. C. Barnett, J. M. Coronas-Serna, W. Zhou, M. J. Ernandes, A. Cao, P. J. Kranzusch, J. C. Kagan,Phosphoinositide interactions position cGAS at the plasma membrane to ensure efficient distinction between self- and viral DNA. Cell 176, 1432-1446.e11 (2019).
Google Scholar

J. Dai, Y.-J. Huang, X. He, M. Zhao, X. Wang, Z.-S. Liu, W. Xue, H. Cai, X.-Y. Zhan, S.-Y. Huang, K. He, H. Wang, N.Wang, Z. Sang, T. Li, Q.-Y. Han, J. Mao, X. Diao, N. Song, Y. Chen, W.-H. Li, J.-H. Man, A.-L. Li, T. Zhou, Z.-G. Liu,X.-M. Zhang, T. Li, Acetylation blocks cGAS activity and inhibits self-DNA-induced autoimmunity. Cell 176,1447-1460.e14 (2019).
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細胞膜局在化とアセチル化が、DNAセンサーcGASの適切な活性化を確実にする。

要約

遺伝毒性ストレスまたはウイルス感染の際に発生するような、細胞質内のDNAは、セカンドメッセンジャー2′3′-環状GMP-AMP(cGAMP)を生成するcGASの活性化を誘導する。cGAMPは、インターフェロン(IFN)の産生とIFN応答遺伝子(ISG)の発現を引き起こす。2報の論文において、cGAS活性化を調節し、自己DNAの認識と自己免疫疾患の発症を防止する機構が明らかにされている。Barnettらは、cGASの局在化によって、自己DNAの認識が制限される一方、ウイルス感染に対する応答が最大化することを明らかにした。ヒトTHP1細胞およびマウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)において、cGASは、これまでに想定されていたように、細胞質に局在するわけではなかった。そうではなく、cGASは細胞膜と結合し、この局在化には、リン脂質PI(4,5)P2がcGASのN末端と結合することが必要であった。野生型cGASを発現するTHP1細胞と比較して、細胞膜と結合しない変異型cGAS(cGASΔN)を発現するTHP1細胞では、基礎IFN発現の増加、H2O2により誘発された遺伝毒性ストレスに対する応答の増悪、DNAウイルスである改変Vaccinia Ankaraの感染に対する応答の低下が認められた。2報目の論文では、Daiらが、特異的リジン残基の基礎アセチル化によって、cGASが不活性状態に保たれることを示した。cGASの活性化には、HDAC3によるLys384、Lys394またはLys414の脱アセチル化が必要であった。アスピリンはさまざまなタンパク質を直接アセチル化する能力をもつ。THP1細胞、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)、あるいはBMDMをアスピリンで処理すると、cGASのアセチル化が生じ、cGAMPの産生が低下した。エカルディ-グティエール症候群(AGS)患者は、細胞質DNAを分解するエキソヌクレアーゼをコードするTREX1に機能喪失変異を有する。Trex1-/-マウスにアスピリンを投与すると、体重減少が防止され、未投与マウスに認められるISG発現が低下した。また、AGS患者のPBMCにおいてもISG発現が低下した。したがって、細胞膜局在化とアセチル化が、cGAS活性化を適切な時と場所で起こさせる機構である。

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2019年3月26日号

Editor's Choice

適切な時と場所でcGASを活性化する

Research Article

プロタミン2のセリン56の脱リン酸化はin vivoでのマウス精子の成熟に重要である

アゴニスト選択的NOP受容体のリン酸化は、化学的に多様なアゴニストによる差次的な活性化後シグナル伝達をin vitroとin vivoで関連付けて解明する

Reviews

酵素酸化リン脂質が、自然免疫および細胞死の重要な調整因子として注目を集める

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