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クロマチンのセロトニン化が分化を抑制する

Chromatin serotonylation limits differentiation

Editor's Choice

Sci. Signal. 09 Apr 2019:
Vol. 12, Issue 576, eaau2218
DOI: 10.1126/scisignal.aau2218

Erin R. Williams

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

L. A. Farrelly, R. E. Thompson, S. Zhao, A. E. Lepack, Y. Lyu, N. V. Bhanu, B. Zhang, Y.-H. E. Loh, A.Ramakrishnan, K. C. Vadodaria, K. J. Heard, G. Erikson, T. Nakadai, R. M. Bastle, B. J. Lukasak, H. Zebroski 3rd,N. Alenina, M. Bader, O. Berton, R. G. Roeder, H. Molina, F. H. Gage, L. Shen, B. A. Garcia, H. Li, T. W. Muir, I.Maze, Histone serotonylation is a permissive modification that enhances TFIID binding to H3K4me3. Nature567, 535-539 (2019).
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M. Cervantes, P. Sassone-Corsi, Modification of histone proteins by serotonin in the nucleus. Nature 567, 464-465 (2019).
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神経伝達物質であるセロトニンによるヒストンH3の修飾が、神経細胞の発生を障害する

要約

セロトニン(5-HT)はニューロンの成長、生存および分化にも重要な神経伝達物質である。5-HTがその同族受容体により認識されると、特定のシグナル伝達カスケードを活性化することができる。しかし5-HTは、セロトニン化と呼ばれるプロセスにおいて、翻訳後に標的タンパク質に結合することもある。トランスグルタミナーゼ(TGM)が介在する細胞骨格タンパク質とGTPアーゼのセロトニン化は、細胞のシグナル伝達を変化させることができる。Farrellyらは、核タンパク質のヒストンH3もセロトニン化されるが、H2A/BまたはH4はセロトニン化されないことを見出した。TGM2はGln5部位でH3をセロトニン化し、この修飾は隣接するLys4のトリメチル化によっても阻害されなかった。セロトニン化ヒストンH3(H3Q4ser)またはトリメチル化セロトニン化H3(H3K5meQ4ser)に対して特異的な抗体により、複数の組織、セロトニン作動性および非セロトニン作動性ニューロン、並びに非ニューロン細胞でも、二重修飾体のみが同定された。遺伝子プロモーター部位でのこのようなエピジェネティック修飾の形成は、ヒト多能性幹細胞またはRN46A-B14不死化神経細胞からセロトニン作動性ニューロンへの分化により増強され、この修飾は遺伝子発現の変化と関連していた。分化したRN46A-B14細胞において、セロトニン化されないH3 Q5A変異体をレンチウイルスにより発現させたとき、神経突起が短縮し、軸索誘導に関連する遺伝子の発現が低下した。合成的に修飾しビオチン化したH3ペプチドを用いて核抽出物の免疫沈降分析を行った結果、二重修飾が、ヒストンH3と転写因子複合体TFIID(TATAボックス結合タンパク質とその会合因子)の相互作用を促進することが示された。これらの知見は、この種の翻訳後クロマチン修飾が遺伝子発現および細胞分化に重要であることを示し、それにより、セロトニン化の影響を受けるプロセスに関する我々の知識を広げるものである。セロトニン化が、他の翻訳後のエピジェネティックなクロマチン修飾に影響するか否か、またはどのように影響するか、あるいは他の細胞種に影響するかを明らかにするためには、さらなる研究が必要である(CervantesとSassone-Corsiによるcommentary参照)。

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