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ミトコンドリア呼吸は必要ない
Mitochondrial respiration not required
Sci. Signal. 11 Jun 2019:
Vol. 12, Issue 585, eaay2985
DOI: 10.1126/scisignal.aay2985
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
Q. Yao, M. P. Khan, C. Merceron, E. L. LaGory, Z. Tata, L. Mangiavini, J. Hu, K. Vemulapalli, N. S. Chandel, A. J.Giaccia, E. Schipani, Suppressing mitochondrial respiration is critical for hypoxia tolerance in the fetal growth plate. Dev. Cell 49, 748-763.e7 (2019).
Google Scholar
F. Long, Less is more: Ditching mitochondria saves hypoxic cartilage. Dev. Cell 49, 656-658 (2019).
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軟骨細胞はミトコンドリア呼吸を抑制することで恒常的低酸素状態を生き抜く
要約
軟骨は無血管組織であるため本質的に低酸素状態にある。転写因子である低酸素誘導因子(HIF)は、低酸素条件下でミトコンドリア呼吸を阻害し嫌気呼吸を促進する遺伝子の発現を刺激するため、関節軟骨および成長板軟骨の両方において軟骨細胞の生存と機能に重要である。Yaoらはマウスにおいて成長板軟骨細胞を生じさせる組織である肢芽間葉で、電子伝達鎖の構成要素をコードするミトコンドリア遺伝子の発現を促進する転写因子であるTfamを特異的に欠失させた。Tfamのノックアウトにより軟骨細胞におけるミトコンドリアDNA含有量および呼吸は予想通り低下したが、軟骨細胞の増殖、細胞死または成長板の形態に影響しなかった。このことは、軟骨の成長にミトコンドリア呼吸が不要であることを示唆している。さらにTfamのノックアウトによって、野生型胚におけるこの組織の重要な特徴である成長板の低酸素状態が消失した。Tfamの欠損は、Hif1α単独またはHif1αとHif2αの両方の欠損に起因する成長板異常ならびに広範な軟骨細胞死をレスキューした。変異マウスおよび対照マウスから単離した軟骨細胞の代謝パラメータを測定した実験から、Hif1αまたはTfamの欠損は、正常または低酸素条件下での細胞のエネルギー産生能に影響せず、さらにHif1α欠損細胞ではTfamの欠損が低酸素誘導性の解糖系を回復させ、しかもHif1α欠損軟骨細胞の細胞死は、カスパーゼを介したアポトーシスよりも、細胞内低酸素状態の亢進により引き起こされることが明らかとなった。このように軟骨細胞は、ミトコンドリア呼吸の抑制により恒常的低酸素状態を管理しており、またミトコンドリア呼吸が他の方法で抑制されているならば、Hif1αはこの点に関して不要である。LongはCommentaryにおいて、これらの所見から提起された軟骨細胞の代謝に関するいくつかの問題に注目している。