• ホーム
  • AMPKは急性のエネルギーストレス下でmTORC2を直接的に活性化して細胞の生存を促進する

AMPKは急性のエネルギーストレス下でmTORC2を直接的に活性化して細胞の生存を促進する

AMPK directly activates mTORC2 to promote cell survival during acute energetic stress

Research Article

Sci. Signal. 11 Jun 2019:
Vol. 12, Issue 585, eaav3249
DOI: 10.1126/scisignal.aav3249

Dubek Kazyken1, Brian Magnuson1, Cagri Bodur1, Hugo A. Acosta-Jaquez1, Deqiang Zhang2, Xin Tong2, Tammy M. Barnes3, Gabrielle K. Steinl3, Nicole E. Patterson1, Christopher H. Altheim1, Naveen Sharma4, Ken Inoki2, Gregory D. Cartee4, Dave Bridges5, Lei Yin2, Steven M. Riddle6, and Diane C. Fingar1,*

1 Department of Cell and Developmental Biology, University of Michigan Medical School, Ann Arbor, MI 48109-2200, USA.
2 Department of Molecular and Integrative Physiology, University of Michigan Medical School, Ann Arbor, MI 48109-2200, USA.
3 Department of Internal Medicine and Department of Molecular and Integrative Physiology, University of Michigan Medical School, Ann Arbor, MI 48109-2200, USA.
4 School of Kinesiology, Department of Molecular and Integrative Physiology, Institute of Gerontology, University of Michigan, Ann Arbor, MI 48109-2200, USA.
5 Department of Nutritional Sciences, University of Michigan, Ann Arbor, MI 48109-2200, USA.
6 Illumina, Madison, WI 53704, USA.

* Corresponding author. Email: dfingar@umich.edu

要約

AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)は、エネルギーストレスを感知すると、異化代謝を促進しつつ同化代謝を抑制して協調的にエネルギーバランスを回復させる。われわれは、培養細胞において多種多様なAMPK活性化因子がAMPKに依存する形でラパマイシン標的タンパク質(mTOR)複合体2(mTORC2)シグナル伝達を亢進することを明らかにした。in vivoの肝臓および初代培養肝細胞において、2型糖尿病治療薬メトホルミン(GlucoPhage)を用いてAMPKを活性化させることによっても、AMPKに依存する形でmTORC2シグナル伝達が亢進された。AMPKを介したmTORC2の活性化は、AMPKを介してmTORC1が抑制されたことによりPI3Kフラックスへの負のフィードバックが減弱した結果ではなかった。それどころか、AMPKはmTORC2(rictorと複合体を形成したmTOR)と会合し、直接的にリン酸化した。in vitroの2段階キナーゼアッセイによる測定では、遺伝子組換えAMPKによるmTORC2のリン酸化が、mTORC2のAktに対する触媒活性を促進するための十分条件になっていた。つまり、AMPKはmTORC2の構成要素を直接的にリン酸化してmTORC2の活性と下流のシグナル伝達を亢進した。機能的には、AMPK、mTORC2、Aktを不活性化すると、急性エネルギーストレス下でアポトーシスが増加した。AMPKがmTORC2を活性化して細胞の生存を促進すること示したこれらのデータは、AMPKが、増殖促進性のmTORC1を阻害することによる腫瘍抑制機能を有しながらも、ある特定の状況では逆に腫瘍発生を促進する方法として、考えうる機構を提示している。まとめると、今回のデータから、mTORC2がAMPKの標的であり、AMPK-mTORC2軸がエネルギーストレス下での細胞生存の促進因子であることが明らかになった。

Citation: D. Kazyken, B. Magnuson, C. Bodur, H. A. Acosta-Jaquez, D. Zhang, X. Tong, T. M. Barnes, G. K. Steinl, N. E. Patterson, C. H. Altheim, N. Sharma, K. Inoki, G. D. Cartee, D. Bridges, L. Yin, S. M. Riddle, D. C. Fingar, AMPK directly activates mTORC2 to promote cell survival during acute energetic stress. Sci. Signal. 12, eaav3249 (2019).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2019年6月11日号

Editors' Choice

ミトコンドリア呼吸は必要ない

Research Article

AMPKは急性のエネルギーストレス下でmTORC2を直接的に活性化して細胞の生存を促進する

CDK5はクラスリンアダプタータンパク質AP2µ2をリン酸化することによりTRPV1のクラスリン依存的内在化を阻害する

最新のResearch Article記事

2025年07月29日号

USP5はFcεRIγを脱ユビキチン化して安定化させ、IgEに誘導されるマスト細胞の活性化とアレルギー性炎症を促進する

2025年07月29日号

プロテオミクス解析により発がん性KRASシグナル伝達の標的、経路および細胞への影響を特定

2025年07月22日号

心筋細胞におけるPTP1Bの欠失は心臓の代謝シグナル伝達を変化させ、高脂肪食によって誘発される心筋症を予防する

2025年07月22日号

レポーターに基づくスクリーニングによってRAS-RAF変異を大腸がんにおける活性型RAS阻害薬耐性のドライバーとして同定

2025年07月15日号

ウイルス性脳炎マウスでは、アストロサイトのRIPK3が転写レベルでセルピンを誘導することにより保護的抗炎症活性を発揮する