• ホーム
  • 新たなつながり:学習と記憶におけるNMDAR

新たなつながり:学習と記憶におけるNMDAR

New connections: NMDARs in learning and memory

Editor's Choice

Sci. Signal. 18 Jun 2019:
Vol. 12, Issue 586, eaay3846
DOI: 10.1126/scisignal.aay3846

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

D. Soto, M. Olivella, C. Grau, J. Armstrong, C. Alcon, X. Gasull, A. Santos-Gómez, S. Locubiche, M. G. de Salazar, R. García-Díaz, E. Gratacòs-Batlle, D. Ramos-Vicente, E. Chu-Van, B. Colsch, V. Fernández-Dueñas, F.Ciruela, À. Bayés, C. Sindreu, A. López-Sala, À. García-Cazorla, X. Altafaj, l-Serine dietary supplementation is associated with clinical improvement of loss-of-function GRIN2B-related pediatric encephalopathy. Sci. Signal.12, eaaw0936 (2019).
Abstract/FREE Full TextGoogle Scholar

P. Afonso, P. De Luca, R. S. Carvalho, L. Cortes, P. Pinheiro, B. Oliveiros, R. D. Almeida, M. Mele, C. B. Duarte,BDNF increases synaptic NMDA receptor abundance by enhancing the local translation of Pyk2 in cultured hippocampal neurons. Sci. Signal. 12, eaav3577 (2019).
Abstract/FREE Full Text  Google Scholar

Z. Yu, Y.-J. Wu, Y.-Z. Wang, D.-S. Liu, X.-L. Song, Q. Jiang, Y. Li, S. Zhang, N.-J. Xu, M. X. Zhu, W.-G. Li, T.-L. Xu,The acid-sensing ion channel ASIC1a mediates striatal synapse remodeling and procedural motor learning. Sci. Signal. 11, eaar4481 (2018).
Abstract/FREE Full Text  Google Scholar

複数の研究によって、学習と記憶におけるNMDA受容体の役割と調節についての重要な洞察を得る。

要約

ニューロンのグルタミン酸作動性カチオンチャネルであるNメチルDアスパラギン酸(NMDA)受容体(NMDAR)は、その存在量と活性によって、神経の発生、結合性、認知の基礎をなすシナプス可塑性を調節している。そのため、NMDARサブユニットをコードする遺伝子の変異はさまざまな神経障害に関連する。Science Signalingの今週号でSotoらは、ある5歳患児においてレット症候群を引き起こす原因となった、GluN2Bをコードする遺伝子の機能欠失型変異体の特徴を明らかにしている。また、興味深いことに、レット症候群患者にみられるNMDAR欠損を単純な栄養補助食品によって効果的に克服できる可能性があることも示している。患者由来のGRIN2B変異体を発現する培養マウス海馬ニューロンでは、NMDARチャネルの活性と樹状形態が損なわれていた。しかし、このニューロンをNMDARアゴニストであるDセリンで処理すると、こうした欠損は回復された。Dセリンの天然立体異性体であり、代謝前駆体であり、さまざまな食物に含まれるLセリンを患者の食事に補充すると、患者の血漿中および脳脊髄液中のDセリン量が増加し、患者の認知能力、社会的能力、運動能力に著しい改善がみられた。また、今週号でAfonsoらは、RNA結合タンパク質であるヘテロ核リボヌクレオタンパク質K(hnRNP K)が、学習中などに活性に応じてニューロンのシナプスで起こるGluN2B含有NMDA受容体量の増加に重要であることを明らかにしている。ニューロトロフィンである脳由来神経栄養因子(BDNF)によって刺激された培養げっ歯類海馬ニューロンにおいて、hnRNP KはキナーゼPYK2をコードするmRNAの翻訳をシナプス特異的に促進し、これによって、GluN2Bの発現量の増加、シナプスの形成、GluN2B含有NMDARの統合が促進された。これらの知見は、シナプス可塑性においてきわめて重要な役割を果たすキナーゼとRNA結合タンパク質を特定するものであり、神経障害との関連性を明らかにする助けとなる。

アーカイブでYuらは、酸感受性チャネルASIC1aが細胞外pHの変化に応じてシナプスのNMDARの存在量を増加させ、機能を亢進させることを明らかにした。ASIC1aは線条体のニューロン内に存在する。ASIC1aチャネルは、NMDARサブユニット(GluN2Bなど)の発現を促進するキナーゼ依存性の転写プログラムを活性化させることによって、線条体ニューロンにおけるシナプスの活性と樹状突起棘の成熟を促進し、運動学習を亢進する。ASIC1a欠損マウスは、新たな運動協調性作業を学習するのが比較的遅かった。これらの知見は、神経発生にも、線条体と運動のコントロールに影響する神経障害にも関与する可能性がある。まとめると、これらの研究は、神経障害の原因についてより詳細に説明するとともに、患者に対する有効な治療法や治療標的となりうる候補を同定するような、NMDARの役割と調節に関するきわめて重要な洞察を与えるものである。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2019年6月18日号

Editor's Choice

新たなつながり:学習と記憶におけるNMDAR

Research Article

食事によるL-セリン補充は機能喪失型GRIN2Bに関連する小児脳症の臨床的改善をもたらす

BDNFは培養海馬ニューロンにおいてPyk2の局所翻訳の亢進によりシナプスNMDA受容体の存在量を増加させる

最新のEditor's Choice記事

2024年4月9日号

伸張を感知して食欲を抑える

2024年4月2日号

アルツハイマー病に関連する脂肪滴

2024年3月26日号

傷つけるのではなく助けるようにミクログリアにバイアスをかける

2024年3月19日号

痒みを分極化する

2024年3月12日号

抗体の脂肪への蓄積による老化