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ユビキチンリガーゼの脂質化

Lipidating a ubiquitin ligase

Editor's Choice

Sci. Signal. 02 Jul 2019:
Vol. 12, Issue 588, eaay5593
DOI: 10.1126/scisignal.aay5593

Erin R. Williams

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

S. Kuchay, H. Wang, A. Marzio, K. Jain, H. Homer, N. Fehrenbacher, M. R. Philips, N. Zheng, M. Pagano,GGTase3 is a newly identified geranylgeranyltransferase targeting a ubiquitin ligase. Nat. Struct. Mol. Biol.10.1038/s41594-019-0249-3 (2019).
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PI3KおよびCa2+のシグナル伝達を制御するユビキチンリガーゼの脂質化を、これまでに記述されていない酵素が促進している。

要約

プレニル化と呼ばれる標的タンパク質の脂質による修飾プロセスは、膜輸送およびシグナル伝達に関与するタンパク質の正しい細胞内局在にとってきわめて重要である。この修飾と同様に重要なのは、このプロセスにおける役割が明確なのは3つのヘテロ二量体酵素複合体のみであり、基質選択の正確な分子的詳細は未だに不明であることである。キナーゼPI3K(ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ)のp85β調節サブユニットおよびイノシトール1,4,5-三リン酸受容体のユビキチン化と分解に重要な、F-ボックスタンパク質FBXL2は保存されているプロトタイプのC-末端プレニル化モチーフを含み、脂質化される。過去の質量分析研究において、オーファンタンパク質であるプレニルトランスフェラーゼαサブユニット反復配列含有タンパク質1(PTAR1)およびRabゲラニルゲラニルトランスフェラーゼのサブユニットβ(RabGGTB)に相当するペプチドが、FBXL2と共精製された。Kuchayらは、内因性PTAR1がFBXL2と相互作用し、その他14のプレニル化モチーフ含有タンパク質とは相互作用しないことを確認した。同様に内因性RabGGTBはPTAR1と相互作用したが、その他のプレニルトランスフェラーゼαサブユニットとは相互作用しなかった。In vitroでは、精製されたPTAR1-RabGGTB複合体(別名、ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ3型(GGTase3)]はFBXL2の脂質化を特異的に促進した。細胞ではPTAR1のノックダウンによりFBXL2の脂質修飾が抑制され、細胞質への誤局在化が促進された。結晶学的研究から、GGTase3はPTAR1に固有のN末端延長配列を持ち、これがFBXL2との相互作用を促進することが示された。PTAR1のN末端延長配列にある残基の変異、またはFBXL2のC末端領域のトランケーションは、この相互作用を妨げた。さらにこれらのデータから、基質の選択に重要な古典的プレニル化モチーフ外にある分子的決定因子が同定された。本研究により、特性が明らかにされていなかったプレニル化に関与する酵素が同定されたのみならず、ユビキチンリガーゼが脂質修飾を受けてその膜標的化が促進されることも明らかにされた。さらに、これらの酵素がその基質をどのように選択しているかに関する洞察は、発がん性のRasファミリーGTPアーゼなど、その他のプレニル化タンパク質を標的とした治療を改善するための戦略に、情報を提供すると考えられる。

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2019年7月2日号

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ユビキチンリガーゼの脂質化

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