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腸内細菌が食物アレルギーを決定する

Bugs in the gut dictate food allergy

Editors' Choice

Sci. Signal. 23 Jul 2019:
Vol. 12, Issue 591, eaay7815
DOI: 10.1126/scisignal.aay7815

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

A. Abdel-Gadir, E. Stephen-Victor, G. K. Gerber, M. Noval Rivas, S. Wang, H. Harb, L. Wang, N. Li, E. Crestani, S.Spielman, W. Secor, H. Biehl, N. Dibendetto, X. Dong, D. T. Umetsu, L. Bry, R. Rachid, T. A. Chatila, Microbiota therapy acts via a regulatory T cell MyD88/RORγt pathway to suppress food allergy. Nat. Med. 25, 1164-1174(2019).
Google Scholar

T. Yardeni, C. E. Tanes, K. Bittinger, L. M. Mattei, P. M. Schaefer, L. N. Singh, G. D. Wu, D. G. Murdock, D. C.Wallace, Host mitochondria influence gut microbiome diversity: A role for ROS. Sci. Signal. 12, eaaw3159(2019).
Abstract/FREE Full Text Google Scholar

腸管常在性の制御性T細胞を刺激するバクテリアセラピーにより、食物アレルギーが抑制されるかもしれない

要約

食物アレルギーがある者にとって、卵、貝類、ピーナッツは恐ろしい言葉だ。そしてこれらは一般に、生後1年のうちに認められる。食物アレルギーを引き起こす原因は不明だが、腸内細菌叢の組成の変化と関連している。Abdel-Gadirらは、「バクテリアセラピー」がマウスの食物アレルギーを抑制する仕組みを発見し、したがってこの治療法がアレルギー患者に有益かもしれないことを見出した。食物アレルギーを有する乳幼児およびモデルマウスから採取した便中細菌を、アレルギーのない乳幼児およびモデルマウスから採取したものと比較解析した結果、共生細菌および一般的な食物アレルギーのトリガーである鶏卵オボアルブミン(OVA)に対する2型ヘルパーT(TH2)細胞様活性が亢進していることが明らかにされた。食物アレルギーと診断された乳幼児から糞便微生物叢移植を受けた無菌マウスは、そうではない健康な乳幼児から糞便微生物叢移植を受けた無菌マウスと異なり、OVAに対するアナフィラキシー様反応を抑えることができなかった。しかし、マウスに対するヒト由来Clostridialesクラスターの単独投与、またはこれとSubdoligranulum variabileの併用投与は、TH2細胞活性を抑制し、制御性T細胞(Treg細胞)に転写因子ROR-γt(未処置マウスまたは食物アレルギーを有する乳幼児の細胞には欠損しているタンパク質)の発現を誘導し、OVAに対する防御を付与した。Treg細胞の除去またはTreg細胞特異的Rorc(ROR-γtをコードする)の欠損は、防御効果を阻害した。これらの所見は、食物アレルギーに関与する一部のシグナル伝達と細胞種を解明し、バクテリアセラピーが患者に有益である可能性を示唆している。ヒトの健康に共生微生物叢がいかに重要で広く関係しているかは、ようやく理解され始めたところである。研究を継続することで、共生微生物叢の組織特異的かつ幅広い生物での役割の背景にある生化学的および分子的機構が、さらにはその組成がどのように制御されているかが解明される(Yardeniら参照)。また、代謝性疾患、神経疾患からアレルギー、がんまでの種々の状態の疾患患者に対して、その臨床的能力を利用できるかもしれない。

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2019年7月23日号

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腸内細菌が食物アレルギーを決定する

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