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脂肪細胞はmiR-211の発現を抑制することによってメラノーマ細胞を環境TGF-βシグナルに対して感作させる

Adipocytes sensitize melanoma cells to environmental TGF-β cues by repressing the expression of miR-211

Research Article

Sci. Signal. 23 Jul 2019:
Vol. 12, Issue 591, eaav6847
DOI: 10.1126/scisignal.aav6847

Tamar Golan1, Roma Parikh1, Etai Jacob2,3,4,5, Hananya Vaknine6, Valentina Zemser-Werner7, Dov Hershkovitz7,8, Hagar Malcov1, Stav Leibou1, Hadar Reichman1, Danna Sheinboim1, Ruth Percik8,9, Sarah Amar6, Ronen Brenner6, Shoshana Greenberger10, Andrew Kung11, Mehdi Khaled12, and Carmit Levy1,*

1 Department of Human Genetics and Biochemistry, Sackler Faculty of Medicine, Tel Aviv University, Tel Aviv 69978, Israel.
2 The Mina and Everard Goodman Faculty of Life Sciences, Bar-Ilan University, Ramat Gan 5290002, Israel.
3 Department of Structural Biology, Weizmann Institute of Science, Rehovot 7610001, Israel.
4 Department of Biostatistics and Computational Biology, Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA 02115, USA.
5 Broad Institute of MIT and Harvard, Cambridge, MA 02142, USA.
6 Institute of Pathology, E. Wolfson Medical Center, Holon 58100, Israel.
7 Institute of Pathology, Tel Aviv Sourasky Medical Center, Tel Aviv 6423906, Israel.
8 Sackler School of Medicine, Tel Aviv University, Tel Aviv 69978, Israel.
9 Institute of Endocrinology, Chaim Sheba Medical Center, Tel Hashomer, Israel.
10 Department of Dermatology, Sheba Medical Center, Tel Hashomer 52621, Israel.
11 Department of Pediatrics, Memorial Sloan Kettering Cancer Center, 1275 York Avenue, New York, NY 10065, USA.
12 INSERM 1186, Gustave Roussy, Université Paris-Saclay, Villejuif 94805, France.

* Corresponding author. Email: carmitlevy@post.tau.ac.il

要約

トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)スーパーファミリーのメンバーは、組織恒常性と病態形成においてきわめて重要なシグナルとなる。メラノーマは表皮で増殖し、転移前に真皮に浸潤する。この疾患増悪には、微小環境TGF-βに対する感受性の増大が伴う。本稿でわれわれは、皮膚脂肪細胞が、メラノーマ細胞をTGF-βに対して感作させることによって、転移の開始を促進することを見出した。メラノーマの臨床サンプルの解析では、通常はより下層の皮下組織層に位置する脂肪細胞が、より上層の真皮層では組織中のメラノーマ細胞に近接して存在することが明らかになり、この所見は疾患の悪性度と相関した。共培養系では、脂肪細胞からサイトカインのIL-6とTNF-αが分泌され、これによってミクロRNAのmiR-211の発現が抑制され、メラノーマ細胞の表現型が増殖性から浸潤性へと切り替えられた。異種移植モデルでは、miR-211はメラノーマの増悪において細胞増殖を促進する一方で転移拡大を抑制するという二重の役割を示した。バイオインフォマティクス解析と分子解析では、miR-211が、I型TGF-β受容体をコードするTGFBR1 mRNAを直接的に標的として翻訳を抑制することが示された。このように、サイトカインを介してmiR-211を抑制するこの軸を通じて、脂肪細胞はメラノーマ細胞のTGF-β受容体量を増加させ、それによってTGF-βリガンドに対する細胞の応答性を亢進させた。TGF-βシグナル伝達を誘導すると、結果的に、培養メラノーマ細胞の表現型は増殖性から浸潤性へと切り替わった。TGF-βを薬理学的に阻害すると、こうした作用は阻止された。今回の知見は、メラノーマにおける脂肪細胞と転移の進行との分子的つながりをより一層明らかにするものであり、患者を治療する際の標的となりうる。

Citation: T. Golan, R. Parikh, E. Jacob, H. Vaknine, V. Zemser-Werner, D. Hershkovitz, H. Malcov, S. Leibou, H. Reichman, D. Sheinboim, R. Percik, S. Amar, R. Brenner, S. Greenberger, A. Kung, M. Khaled, C. Levy, Adipocytes sensitize melanoma cells to environmental TGF-β cues by repressing the expression of miR-211. Sci. Signal. 12, eaav6847 (2019).

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