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炎症は幹細胞の静止状態を誘導する

Inflammation induces stem cell quiescence

Editor's Choice

Sci. Signal. 29 Oct 2019:
Vol. 12, Issue 605, eaaz9665
DOI: 10.1126/scisignal.aaz9665

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

M. Chen, R. R. Reed, A. P. Lane, Chronic inflammation directs an olfactory stem cell functional switch from neuroregeneration to immune defense. Cell Stem Cell 25, 501-513.e5 (2019).
Google Scholar

J. Rustenhoven, J. Kipnis, Smelling danger: Olfactory stem cells control immune defense during chronic inflammation. Cell Stem Cell 25, 449-451 (2019).
Google Scholar

慢性炎症は嗅覚神経幹細胞を静止させ、免疫調節性サイトカインを分泌させる。

要約

嗅覚ニューロン(OSN)は環境からの侵襲に直接的に曝露されているので、生来、短命なだけでなく損傷に対する感受性が高い。OSNは成人期を通じて嗅上皮で幹細胞によって置換され、異なる幹細胞集団が恒常性と損傷誘導性の補充に寄与する。このような再生能は慢性炎症と老化によって損なわれる。Chenらは、慢性副鼻腔炎患者にみられる炎症およびOSN消失の増悪を繰り返す誘導性嗅炎症のマウス遺伝モデルを用いて、OSN消失の根底にある機構を調べた。炎症は、最初のうちは水平基底幹細胞(HBC)を刺激して増殖させ、新たなOSNを生じさせたが、慢性炎症はOSNの生成を阻害した。炎症誘導物質を除去するとHBCはOSNへの分化を再開したことから、再生能は消失していなかったことが示された。in vivoでHBCの炎症性核内因子κB(NF-κB)シグナル伝達の活性化を延長させると、OSNの分化を阻害する転写因子をコードする遺伝子の発現が刺激され、幹細胞性に関連する遺伝子の発現が促進された。また、NF-κBシグナル伝達を延長させると、T細胞とマクロファージを動員して増殖を刺激するサイトカインがHBCによって産生された。似たような免疫細胞浸潤の増加、HBC増殖の減少、OSN分化の減少は、慢性副鼻腔炎患者由来の嗅組織でもみられた。このように慢性炎症は、ニューロン新生を犠牲にしながら、HBCを刺激して免疫細胞を動員するサイトカインを産生させる。免疫細胞浸潤は成人脳での神経原性能の消失とも関連づけられていることから(Rustenhoven and Kipnisによるコメンタリー参照)、これらの知見は、老化過程にある脳や疾患状態の脳でみられるニューロン新生障害に寄与する炎症過程にも関連している可能性がある。

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2019年10月29日号

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