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調節されたタンパク質分解を介した代謝適応

Metabolic adaption through regulated proteolysis

Editor's Choice

Sci. Signal. 19 Nov 2019:
Vol. 12, Issue 608, eaba2257
DOI: 10.1126/scisignal.aba2257

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

T. MacVicar, Y. Ohba, H. Nolte, F. C. Mayer, T. Tatsuta, H.-G. Sprenger, B. Lindner, Y. Zhao, J. Li, C. Bruns, M. Krüger, M. Habich, J. Riemer, R. Schwarzer, M. Pasparakis, S. Henschke, J. C. Brüning, N. Zamboni, T. Langer, Lipid signalling drives proteolytic rewiring of mitochondria by YME1L. Nature 575, 361-365 (2019).
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ミトコンドリアタンパク質のターンオーバーを誘導することによって、細胞を酸素および栄養の欠乏に代謝的に適応させることができる。

要約

膵管腺癌(PDAC)などの固形腫瘍は必ず低酸素および低栄養環境で増殖する。MacVicarらは、ミトコンドリア内膜プロテアーゼYME1Lによるミトコンドリアタンパク質のターンオーバーを誘導することによって細胞を酸素および栄養の欠乏に代謝的に適応させることができることを発見した。YME1L欠損細胞では、足場非依存性増殖とグルタミン依存性呼吸の欠損が認められた。増殖の欠損は、野生型YME1Lを発現させると回復したが、触媒不活性型変異体を発現させても回復しなかった。低酸素細胞内で存在量が低下するYME1Lの基質には、ミトコンドリア融合因子OPA1、タンパク質トランスロカーゼのサブユニット、ミトコンドリア脂質輸送タンパク質、ミトコンドリア代謝に関連するタンパク質などがあった。低酸素誘導因子1α(HIF-1α)が欠乏すると、YME1L基質の存在量は増加した。多タンパク質複合体であるラパマイシン標的タンパク質複合体1(mTORC1)は、低酸素および低栄養によって阻害され、YME1L基質量は、mTORC1の薬理学的阻害または遺伝学的不活性化だけでなく、mTORC1活性を抑制するグルタミン欠乏によっても減少した。薬理学的なmTORC1阻害、アミノ酸欠乏、または低酸素によって、ミトコンドリア膜におけるミトコンドリアタンパク質の移入量と脂質ホスファチジルエタノールアミンの存在量が減少した。mTORC1の標的であるホスファチジン酸ホスファターゼLIPIN1をノックダウンさせると、mTORC1阻害時に生じるYME1L基質量の低下が軽減された。これらの結果から、低酸素または低栄養、またはその両方によって引き起こされるmTORC1シグナル伝達の阻害によって、LIPIN1に媒介される脂質代謝が変化し、結果的にホスファチジルエタノールアミン量が減少し、それによってYME1L基質のタンパク質分解が促進されることが示された。LIPIN1をノックダウンさせると、スフェロイド状態(低酸素状態となる)の野生型細胞の増殖は阻害されたが、YME1L欠損細胞の増殖は阻害されなかった。YME1Lをノックダウンさせると、スフェロイドのサイズは小さくなり、PDAC細胞株から形成された異種移植腫瘍の増殖が抑制され、ヒトPDAC検体でYME1L基質量が減少し、HIF-1α量が増加した。このように、特異的なミトコンドリアタンパク質の分解を誘導することによって、細胞を酸素および栄養の欠乏に代謝的に適応させることができる。

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2019年11月19日号

Editor's Choice

調節されたタンパク質分解を介した代謝適応

Research Article

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