- ホーム
- KRAS阻害薬に対する耐性を予測する
KRAS阻害薬に対する耐性を予測する
Predicting resistance to KRAS inhibitors
Sci. Signal. 14 Jan 2020:
Vol. 13, Issue 614, eaba8405
DOI: 10.1126/scisignal.aba8405
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
J. Y. Xue, Y. Zhao, J. Aronowitz, T. T. Mai, A. Vides, B. Qeriqi, D. Kim, C. Li, E. de Stanchina, L. Mazutis, D. Risso, P. Lito, Rapid non-uniform adaptation to conformation-specific KRAS(G12C) inhibition. Nature 10.1038/s41586-019-1884-x (2020).doi:10.1038/s41586-019-1884-xpmid:31915379
CrossRef Google Scholar
K. Lou, V. Steri, A. Y. Ge, Y. C. Hwang, C. H. Yogodzinski, A. R. Shkedi, A. L. M. Choi, D. C. Mitchell, D. L. Swaney, B. Hann, J. D. Gordan, K. M. Shokat, L. A. Gilbert, KRASG12C inhibition produces a driver-limited state revealing collateral dependencies. Sci. Signal. 12, eaaw9450 (2019).
Google Scholar
KRAS阻害薬に対する耐性を阻止するための、共通の標的を特定する研究
要約
多くのがんでは遺伝子KRASに増殖促進性の変異が認められる。これによりコードされるタンパク質は長い間「創薬が困難(undruggable)」と考えられてきたが、最近になって、これら変異の1つ「KRAS G12C」の阻害薬が開発された。これらの新薬は臨床試験において有望な成績を示しているものの、その効果は部分的に過ぎず、患者では元来の耐性と適応性の耐性の両方が認められる。本誌ArchivesにおいてLouらは、KRAS G12C標的薬ARS1620の有効性を高める可能性がある併用薬をスクリーニングした。ARS1620で処理した肺がんおよび膵がん細胞において再構成された経路を同定した機能的ゲノム解析から、著者らは、ホスファターゼSHP2または受容体キナーゼEGFRあるいはFGFRの共阻害により薬物の標的結合が増強し、しかもキナーゼであるAXL、PI3KまたはCDK4/6の阻害は腫瘍細胞の生存の代替経路を抑制することを見出した。Xueらは同様の目標を設定した研究において、一部の肺がんがどのようにしてARS1620誘導性のKRAS G12C阻害を回避できるかを報告している。細胞株の単一細胞RNAシーケンシングとマウスを用いた詳細な研究から、著者らは部分集団である静止期の細胞における迂回機構を同定した。EGFRおよびSHP2のみならずキナーゼAURKAといった主要タンパク質を標的とすることで、これらの経路がKRAS G12Cの新規合成を誘導することを阻止し、それによりKRASシグナル伝達の再活性化を阻止した。まとめると、これらの研究から、KRAS G12C誘導がんの患者において薬剤耐性を回避し、生存率を改善する可能性がある併用療法が特定された。