• ホーム
  • コレラ菌MARTX毒素はアクチン細胞骨格の崩壊を引き起こす前に細胞骨格の損傷に対する炎症反応を抑える

コレラ菌MARTX毒素はアクチン細胞骨格の崩壊を引き起こす前に細胞骨格の損傷に対する炎症反応を抑える

The Vibrio cholerae MARTX toxin silences the inflammatory response to cytoskeletal damage before inducing actin cytoskeleton collapse

Research Article

Sci. Signal. 14 Jan 2020:
Vol. 13, Issue 614, eaaw9447
DOI: 10.1126/scisignal.aaw9447

Patrick J. Woida and Karla J. F. Satchell*

Department of Microbiology-Immunology, Feinberg School of Medicine, Northwestern University, Chicago, IL 60611, USA.

* Corresponding author. Email: k-satchell@northwestern.edu

要約

多機能性自己プロセシング毒素内リピート(MARTX)毒素は、機能的に独立した複数のエフェクタードメインを標的の真核細胞内へ移動させるポア形成細菌性毒素である。コレラ菌(Vibrio cholerae)は腸上皮細胞(IEC)に定着し、アクチン架橋結合ドメイン(ACD)、Rho不活性化ドメイン(RID)、α/βヒドロラーゼドメインという3つのエフェクタードメインを有するMARTX毒素を用いて、自然免疫を抑制し、コロニー形成を促進する。われわれは、単一の毒素から送達されるこれら複数の触媒性酵素が腸管内の自然免疫を抑制するために協調して機能するかどうかを調べた。そして、培養ヒトIECにおいて、ACDに誘発される細胞骨格の崩壊が細胞外シグナル制御キナーゼ、p38、c-Junアミノ末端キナーゼのマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達を活性化し、インターロイキン8(IL-8、別名CXCL8)の分泌およびCXCL8、腫瘍壊死因子(TNF)、その他の炎症誘発性遺伝子の発現を特徴とする堅牢な炎症促進性反応を誘発することを実証した。一方、ACDと本来一緒に送達されるRIDとABHは、Rac1を介してMAPKの活性化を阻害し、それによってACDに誘導される炎症を阻止した。またRIDは、加熱死菌、TNF、またはラトランクリンAによって誘導されるIL-8の分泌も消失させた。このように、MARTX毒素は酵素の多機能性を用いて、細菌因子に対する、または毒素によって引き起こされた損傷に対する宿主応答を抑える。さらに、これらのデータは、コレラ菌MARTX毒素がどのように腸管内の炎症を抑制し、非炎症性下痢性疾患として古典的に定義されるコレラに寄与するのかを明らかにしている。

Citation: P. J. Woida, K. J. F. Satchell, The Vibrio cholerae MARTX toxin silences the inflammatory response to cytoskeletal damage before inducing actin cytoskeleton collapse. Sci. Signal. 13, eaaw9447 (2020).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2020年1月14日号

Editors' Choice

KRAS阻害薬に対する耐性を予測する

Research Article

コレラ菌MARTX毒素はアクチン細胞骨格の崩壊を引き起こす前に細胞骨格の損傷に対する炎症反応を抑える

単一分子イメージングにより細胞内の機能的TNFα誘導性細胞膜TNFR1クラスターのオリゴマー状態が明らかに

最新のResearch Article記事

2025年07月08日号

MDM2-p53軸がnorrin/frizzled4シグナル伝達と血液-CNSバリア機能を調節する

2025年07月01日号

パーキンソン病に関連するLRRK2変異マウスに対するキナーゼ阻害剤投与による線条体神経保護経路の回復

2025年07月01日号

PKCηのミスセンス変異はゴルジ体に限局したシグナル伝達を増強し、潜性遺伝性の家族性アルツハイマー病に関連する

2025年06月24日号

STIM1ではなくSTIM2の欠損が代謝リプログラミングとATF4 ERストレス経路を介して大腸がんの転移を促進する

2025年06月17日号

アンフィレギュリンは感覚ニューロンにおいてヒストンのラクチル化を刺激する解糖系を亢進させることによって神経障害性疼痛に関与する