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植物のケモカインが模倣する

Plant chemokine mimics

Editors' Choice

Sci. Signal. 28 Jan 2020:
Vol. 13, Issue 616, eabb0387
DOI: 10.1126/scisignal.abb0387

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

D. Sinitski, K. Gruner, M. Brandhofer, C. Kontos, P. Winkler, A. Reinstädler, P. Bourilhon, Z. Xiao, R. Cool, A. Kapurniotu, F. J. Dekker, R. Panstruga, J. Bernhagen, Cross-kingdom mimicry of the receptor signaling and leukocyte recruitment activity of a human cytokine by its plant orthologs. J. Biol. Chem. 295, 850-867 (2020).
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ケモカイン受容体CXCR4に結合し活性化させる植物ケモカインオルソログに応答して、ヒト免疫細胞が遊走する。

要約

ヒトのマクロファージ遊走阻止因子(MIF)は、トートメラーゼ活性とケモカイン様の性質を有するサイトカインである。MIFは、CXCR4などのさまざまなケモカイン受容体に結合して刺激することによって、免疫細胞遊走を誘導し、宿主免疫を調節する。MIF-CXCR4シグナル伝達経路は、炎症、アテローム性動脈硬化症、転移に関与する。MIFタンパク質は進化的に保存されており、進化を通じて追加の調節機能を獲得した古代酵素であると考えられることに注目して、Sinitskiらは、植物のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)によってコードされ、ヒトMIFと30%の配列相同性を示す、3つのMDLタンパク質のファミリー(AtMDLs)を研究した。組換えAtMDLタンパク質は組換えヒトMIFと同様にフォールドすること、また、円二色性分光法を用いた評価により、それらの二次構造は類似していることが見出された。ヒトMIFと比較して、AtMDLタンパク質はin vitroでわずかなトートメラーゼ活性しか示さなかったが、これは基質結合ポケットの立体障害が原因であると考えられた。しかし、AtMDLsは酵母細胞形質転換体においてCXCR4に結合し、HEK293細胞ではCXCR4シグナル伝達を刺激し、PI3K-Akt経路を活性化させた。In vitroでAtMDL1はヒトMIFと同程度に効率的に、CXCR4を介してヒト単球の遊走を刺激した。AtMDLsは、in vitroでCXCR4依存的に、初代培養ヒトT細胞に対する走化性因子としても作用し、T細胞をAtMDLsで前処理すると、ヒトMIFおよびCXCR4リガンドCXCL12に対するその後の応答が脱感作された。総合すると、これらのデータからは、ヒトサイトカインと相同性をもつ植物タンパク質が、ヒト受容体に結合し、その受容体を介するシグナル伝達を刺激する可能性があることが示唆されており、この知見は、これらの植物タンパク質によってヒト免疫応答が調節される仕組みに関わる。

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2020年1月28日号

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