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微生物性代謝物が脂質代謝を形づくる

Microbial metabolites shape lipid metabolism

Editors' Choice

Sci. Signal. 14 Apr 2020:
Vol. 13, Issue 627, eabc1552
DOI: 10.1126/scisignal.abc1552

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. R. Araújo, A. Tazi, O. Burlen-Defranoux, S. Vichier-Guerre, G. Nigro, H. Licandro, S. Demignot, P. J. Sansonetti, Fermentation products of commensal bacteria alter enterocyte lipid metabolism. Cell Host Microbe 27, 358-375.e7 (2020).
Google Scholar

J. Wen, J. F. Rawls, Feeling the burn: Intestinal epithelial cells modify their lipid metabolism in response to bacterial fermentation products. Cell Host Microbe 27, 314-316 (2020).
Google Scholar

2つの細菌性発酵産物が小腸での脂質の代謝と分泌に影響する

要約

小腸上皮細胞(IEC)によって吸収された食事性脂質は、IEC内で代謝されるか、あるいは脂質を全身に分配するリポタンパク質粒子カイロミクロンとしてリンパ管内に分泌されるまで、処理されて脂肪滴(LD)内で貯蔵されるかのいずれかである(Wen and Rawls参照)。腸内微生物は食事性脂質の消化、吸収、分泌に影響する。Araújoらは、乳酸菌の一種ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)または大腸菌(Escherichia coli)の生菌、またはこれらの菌種の培養上清(CM)が、マウス小腸由来の細胞株であるm-ICcl2細胞からのカイロミクロンの分泌を減少させることを明らかにした。細菌遺伝学的スクリーニングと質量分析により、m-ICcl2細胞に対する生菌またはCMの作用を再現するために必要十分な2つの細菌性炭水化物発酵の最終産物として、L. paracaseiによって産生された乳酸とE. coliによって産生された酢酸が同定された。in vitroでもin vivoでも、L. paracaseiまたはL-乳酸は腸細胞の脂質貯蔵量を増加させたが、E. coliまたは酢酸は脂質貯蔵量を減少させ、脂質消費量を増加させた。また、L. paracaseiまたはL-乳酸はin vivoで循環トリグリセリド量を減少させた。L-乳酸はm-ICcl2細胞でマロニル補酵素Aに変換され、マロニル補酵素Aは脂質の酸化を抑制する。一方、酢酸はm-ICcl2細胞でアセチル補酵素Aとアデノシン一リン酸(AMP)に変換され、AMPキナーゼ(AMPK)の活性化が亢進され、AMPKの標的であるペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPAR-α)およびPPAR-γコアクチベーター1α(PGC-1α)量が増加した。PPAR-αおよびPPAR-γはいずれも脂質の酸化に必要な遺伝子の発現を促進する転写因子である。これらの知見は、微生物の炭水化物代謝が腸内の脂質の代謝と分泌に影響する際の分子機構を同定している。

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2020年4月14日号

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