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飢餓に対するミトコンドリアのCLUHing

CLUHing in mitochondria to starvation

Editor's Choice

Sci. Signal. 12 May 2020:
Vol. 13, Issue 631, eabc6690
DOI: 10.1126/scisignal.abc6690

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

D. Pla-Martín, D. Schatton, J. L. Wiederstein, M.-C. Marx, S. Khiati, M. Krüger, E. I. Rugarli, CLUH granules coordinate translation of mitochondrial proteins with mTORC1 signaling and mitophagy. EMBO J. 39, e102731(2020).
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RNA結合タンパク質CLUHが、飢餓に応答した肝細胞ミトコンドリアのリプログラミングを助ける。

要約

栄養素は機構的ラパマイシン標的タンパク質複合体1(mTORC1)シグナル伝達と同化経路を刺激する一方、飢餓はmTORC1シグナル伝達を阻害し、異化経路を促進し、ミトコンドリア代謝の配線を替える。Clustered mitochondria homolog(CLUH)は、ミトコンドリアタンパク質をコードする転写物の安定と翻訳を促進するRNA結合タンパク質であり、飢餓に対するマウス肝の代謝適応に重要な役割を果たす。Pla-Martínらは、CLUHとそのmRNA基質、さらにその他のRNA結合タンパク質が、肝細胞において細胞質顆粒を形成することを見出した。これらのリボヌクレオタンパク質(RNP)粒子は細胞質全体に分布したが、マウスまたは初代培養肝細胞を飢餓状態にすると、核周囲で合体し、mTORと共局在した。RNA結合タンパク質G3BP1およびG3BP2はストレス顆粒の構成成分であるが、G3BP1とG3BP2を含有するCLUH陽性RNPは、HeLa細胞のストレス顆粒とは異なり、CLUH含有RNPは、G3BP1とG3BP1を減少させた場合でも形成された。野生型マウスおよびCLUHノックアウトマウスの肝細胞を用いた実験により、CLUHが、摂食状態下では、ミトコンドリア翻訳に必要なタンパク質をコードする転写物の安定と翻訳を促進するが、飢餓時には、異化経路に関連する転写物の安定と翻訳を促進することが示された。初代培養肝細胞とマウスにおいて、CLUHは、飢餓状態下でのmTORC1シグナル伝達の抑制とアポトーシスからの保護に必要であった。CLUHノックアウトマウスから得た全肝および肝細胞において、摂食状態下でオートファジーの亢進とマイトファジーの低下が認められ、CLUHノックアウトマウス由来の肝細胞および胚線維芽細胞において、mTORC1阻害剤であるラパマイシンによりマイトファジーが回復した。CLUHノックアウトマウスとCLUHを減少させたCOS-7細胞において、ラパマイシンによって、あるいはG3BP1またはG3BP2の減少によって、ミトコンドリアのクラスター形成表現型が回復した。これらの結果により、CLUH含有RNPは、mTORC1シグナル伝達を、肝細胞の栄養素利用性に対するミトコンドリア適応と連動させるために重要であることが確認される。

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