自己阻害を克服する

Overcoming autoinhibition

Editor's Choice

Sci. Signal. 19 May 2020:
Vol. 13, Issue 632, eabc8254
DOI: 10.1126/scisignal.abc8254

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

I. J. Fisher, M. L. Jenkins, G. G. Tall, J. E. Burke, A. V. Smrcka, Activation of phospholipase C β by Gβγ and Gαq involves C-terminal rearrangement to release autoinhibition. Structure S0969-2126(20)30133-7 (2020).
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Gタンパク質によって引き起こされるPLC-β2のC末端領域のコンフォメーション変化が、自己阻害を解放する。

要約

ホスホリパーゼC(PLC)ファミリーの酵素のメンバーは、受容体により活性化されたとき、細胞膜脂質であるホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸を加水分解し、シグナル伝達分子であるイノシトール1,4,5-三リン酸(IP3)とジアシルグリセロール(DAG)を生成する。PLC-β2とPLC-β3のアイソフォームは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)活性化の下流にあるGαqサブユニットおよび(Giタンパク質に由来する)Gβγ二量体によって刺激される。PLC-βアイソフォームのC末端領域には、近位と遠位の両方のC末端ドメイン(CTD)が含まれ、これらは柔軟なリンカー領域によって結合している。Fisherらは水素重水素交換質量分析法(HDX-MS)を用いて、膜、活性型Gαq,およびGβγの存在下ならびに非存在下でのPLC-β2の立体構造のダイナミクスを検討した。PLC-リポソーム複合体とPLC-Gαq-リポソーム複合体のHDX速度の差から、X線結晶構造解析によって以前決定されていたPLC-βの既知のGαq-結合領域とほぼ一致する、コンフォメーション変化が明らかにされた。一方、PLC-膜複合体にGβγを追加すると、遠位CTDに沿った著しいコンフォメーション変化が引き起こされ、これはPLC-β2酵素活性の3〜4倍の増加を伴っていた。野生型PLC-β2と、遠位CTDを欠損したバリアントを比較したところ、このドメインは自己阻害領域であることが示唆された。両CTD間のリンカー領域を欠損するPLC-β2バリアントは、細胞内で発現したとき高い基礎活性を呈し、これはGαqとGβγのいずれの存在よっても亢進しなかったことから、Gタンパク質依存性PLC-β2活性化にはCTDの配向が重要であることが示唆された。PLC-β2のGβγ-結合表面は決定されておらず、またGαqとGβγは別々にPLC-β2と相互作用するものの、これらの所見は、GαqとGβγはいずれも酵素の自己阻害の解放につながるCTDのコンフォメーション変化を引き起こすことを示唆している。

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