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GPCRシグナル伝達における細胞膜の姿を明らかにする

Revealing the plasma membrane in GPCR signaling

Editor's Choice

Sci. Signal. 16 Jun 2020:
Vol. 13, Issue 636, eabd3019
DOI: 10.1126/scisignal.abd3019

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. Yin, K.-Y. M. Chen, M. J. Clark, M. Hijazi, P. Kumari, X. Bai, R. K. Sunahara, P. Barth, D. M. Rosenbaum, Structure of a D2 dopamine receptor-G-protein complex in a lipid membrane. Nature 10.1038/s41586-020-2379-5 (2020).
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膜に包埋された活性型D2ドパミン受容体の構造解析は、より選択的な治療法の開発の助けになる。

要約

神経伝達物質ドパミンは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)ファミリーのD1R〜D5Rという5つの受容体を介して作用し、報酬や運動などの生理機能と認知機能を調節する。D2ドパミン受容体(D2R)のアゴニスト(作動薬)はパーキンソン病(PD)の治療に使用され、D2R阻害薬はドパミン作動性シグナル伝達を抑制して統合失調症を治療する。D2RはGiファミリーGタンパク質と共役して二次メッセンジャーcAMPの産生を阻害する。これまでの研究で、細胞膜から単離された可溶化型ドパミン受容体の不活性型立体配置の構造はほぼ明らかにされている。Yinらは、低温電子顕微鏡(cryo-EM)を用いて、リン脂質二重層に包埋された状態でGiと複合体を形成しているアゴニスト結合型ヒトD2Rの構造を解析した。この構造と不活性型立体配置の構造との比較から、アゴニストに誘導されたD2R膜貫通ドメインの立体配置の変化が、結合型Giとの相互作用および結合型Giの活性化の促進を可能にしていることがわかった。さらに、この研究によって、Giタンパク質のGβおよびGγサブユニットにある特徴的な残基とリン酸脂質二重層の極性頭部グループとの間の相互作用も明らかになった。天然のリン酸脂質二重層と類似の環境におけるD2Rの活性型立体配置の構造解析は、GPCR-Gタンパク質間の共役を調節する際の細胞膜の役割を浮き彫りにし、多様な中枢神経系疾患を治療するための受容体選択的リガンドの開発を助けることになるだろう。

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2020年6月16日号

Editor's Choice

GPCRシグナル伝達における細胞膜の姿を明らかにする

Research Article

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