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新たなつながり:キナーゼのレドックス調節

New connections: Redox regulation of kinases

Editor's Choice

Sci. Signal. 21 Jul 2020:
Vol. 13, Issue 641, eabd8558
DOI: 10.1126/scisignal.abd8558

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

D. P. Byrne, S. Shrestha, M. Galler, M. Cao, L. A. Daly, A. E. Campbell, C. E. Eyers, E. A. Veal, N. Kannan, P. A.Eyers, Aurora A regulation by reversible cysteine oxidation reveals evolutionarily conserved redox control of Ser/Thr protein kinase activity. Sci. Signal. 13, eaax2713 (2020). Google Scholar

S. Shrestha, S. Katiyar, C. E. Sanz-Rodriguez, N. R. Kemppinen, H. W. Kim, R. Kadirvelraj, C. Panagos, N.Keyhaninejad, M. Colonna, P. Chopra, D. P. Byrne, G. J. Boons, E. van der Knaap, P. A. Eyers, A. S. Edison, Z. A.Wood, N. Kannan, A redox-active switch in fructosamine-3-kinases expands the regulatory repertoire of the protein kinase superfamily. Sci. Signal. 13, eaax6313 (2020). Google Scholar

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複数の研究から、キナーゼが可逆的酸化によってどのように構造的に調節されているかに関する洞察が蓄積されている。

要約

活性酸素種(ROS)は細胞の呼吸と代謝の正常な副産物であるが、細胞内で酸化還元バランス(レドックス状態)が崩れることで、さまざまな病理に寄与する酸化ストレスおよび細胞のシグナル伝達の変化を引き起こすことがある。レドックスシグナル伝達は一部、タンパク質のシステイン残基の修飾に媒介されている。本誌Archivesにおいて、ByrneらとShresthaらはともに、活性化ループのシステインであるCys290が、真核生物のカイノーム全体で進化的に保存されており、キナーゼ活性のレドックス調節を可能にしていることを明らかにした。Byrneらは、オーロラAなど種々の有糸分裂キナーゼの機能が、ROSに関連する薬剤によって阻害され、還元剤によって促進されることを見出した。Shresthaらは、糖尿病関連代謝キナーゼであるFN3K内で保存されているシステインが、その機能的オリゴマー形成を変化させ、そしてその結果として幅広い細胞のレドックス状態を変化させる、レドックス制御スイッチとして働くことを見出した。本誌今週号において、LimらはオーロラAに着目していた。この活性は細胞分裂を促進することから、オーロラAを標的とすることは、がん患者の治療にとって興味深いことである。このキナーゼを阻害するCys結合化合物をスクリーニングした後、著者らは、そのような付加体が立体構造にどのように影響するのか、ひいてはオーロラAの活性化にどのように影響するかを調べた。これらの化合物の1つである補酵素Aは、2つの二量体化構造となった。そのうち1つでは保存されているCys290がCoA化されており、その活性化(自己リン酸化)部位は「開いた」立体構造をしていた。また2つめの構造はCoA化されていなかったが、「活性」構造をしていた。これらの構造は、CoA化が、オーロラAの自己リン酸化を促進する中間体構造を形成することで、その活性化を促進する可能性を示唆している。したがって、CoA化を阻害する化合物は、腫瘍においてオーロラAを阻害する可能性がある。これら3本の研究は、キナーゼのレドックス修飾が、幅広い重要な細胞プロセスにおいてその機能を強めることを示したという点で一貫しているものの、研究間の相違は、そのような調節は単純なものではないことを示している。これをさらに複雑にしているものが、さらに遡って本誌2020年のArchivesに発表されたBehringらの所見である。その研究で著者らは、増殖因子受容体EGFRのリガンド結合誘導性の活性化が、限局性のROS産生を促進するのみならず(これはEGFR経路にあるタンパク質中のシステインを酸化する)、これらのタンパク質のEGFRを介したリン酸化がその立体構造を変化させ、ROS標的システインがレドックス調節にアクセスできるようにし、かつ感受性をもたせることを見出した。これらのシステインは埋もれており、EGFの非存在下ではアクセスできなかった。これらの所見は、タンパク質のレドックス調節が細胞内のレドックス状態に応じてのみ調整されるのではなく、タンパク質の活性化状態に応じても調整されることを示している。したがって全体として、キナーゼのシグナル伝達に対する酸化ストレスの機能的影響は、時空間的な因子に依存しているのみならず、リン酸化と相互依存しているようである。このような、これまでは正しく評価されていなかった翻訳後修飾をさらに検討することで、細胞生物学、生理学およびその臨床的意義に関するわれわれの理解に大きな変化がもたらされる可能性がある。

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