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健常量の恐怖
A healthy dose of fear
Sci. Signal. 13 Oct 2020:
Vol. 13, Issue 653, eabf1712
DOI: 10.1126/scisignal.abf1712
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA Email: lferrare@aaas.org
K. Alves de Lima, J. Rustenhoven, S. Da Mesquita, M. Wall, A. F. Salvador, I. Smirnov, G. Martelossi Cebinelli, T.Mamuladze, W. Baker, Z. Papadopoulos, M. B. Lopes, W. S. Cao, X. S. Xie, J. Herz, J. Kipnis , Meningeal γδ T cells regulate anxiety-like behavior via IL-17a signaling in neurons. Nat. Immunol. (2020).
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髄膜常在性T細胞からのIL-17aの分泌が、マウスにおける不安様行動を促す。
要約
髄膜(脳を覆っている膜)中の免疫細胞は、脳を病原性感染症から防御している。髄膜の免疫細胞から分泌されるサイトカイン―特にγδ T細胞から分泌されるIL-17A―は、マウスにおいて学習と社会性にも影響する。Alves de Limaらはヒトおよびマウスの髄膜中にγδ T細胞が存在することを確認し、マウスではこれらの細胞が生後に髄膜から起源して維持されることについて特性解析を行った(Rua and Pujolによる記事も参照)。しかし予想外なことに、in vivoにおけるIL-17Aの蛍光追跡から、髄膜のγδ T細胞は非感染状態でもサイトカインを産生することが明らかにされた。オープンフィールドの十字迷路行動試験を行ったところ、γδ T細胞またはグルタミン作動性ニューロン特異的にIL-17A受容体を欠損するマウスは野生型マウスに比べて、不安様行動を呈することが少なかった。同様に、野生型マウスでは脳脊髄液へのIL-17A中和抗体注射により不安様行動が減少した。広域抗生物質の投与または無菌マウスの使用は髄膜のγδ17 T細胞数に影響しない一方で、Il17aの転写を低下させたことから、IL-17Aの基礎発現が共生微生物叢により影響されるようであった。マウスではヒトと同様、(ある程度の)不安と恐怖に関連した行動が防御的な生存機構として進化している。したがってこれらの所見は、γδ T細胞によるIL-17Aの産生が恐怖行動および感染に対する身体の免疫応答を修飾するよう進化していること、しかもこの機構が宿主の共生微生物叢によって影響される可能性があることを示唆している。