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ATDCはKEAPに結合してNRF2を活性化する
ATDC KEAPs NRF2 active
Sci. Signal. 09 Feb 2021:
Vol. 14, Issue 669, eabg9105
DOI: 10.1126/scisignal.abg9105
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org
V. Purohit, L. Wang, H. Yang, J. Li, G. M. Ney, E. R. Gumkowski, A. J. Vaidya, A. Wang, A. Bhardwaj, E. Zhao, I.Dolgalev, A. Zamperone, E. V. Abel, M. P. D. Magliano, H. C. Crawford, D. Diolaiti, T. Y. Papagiannakopoulos, C. A. Lyssiotis, D. M. Simeone, ATDC binds to KEAP1 to drive NRF2-mediated tumorigenesis and chemoresistance in pancreatic cancer. Genes Dev. 35, 218-233 (2021).
Abstract/FREE Full Text Google Scholar
ATDCはKEAP1を介したNRF2のユビキチン化を阻害することで、膵がんの進行および化学療法抵抗性を促進している。
要約
酸化ストレスは、細胞の抗酸化応答の主要な転写活性化因子であるNRF2を、ユビキチンリガーゼの基質アダプターKEAP1から放出させることで安定化させる。高い代謝活性に起因する酸化ストレスに耐えるため、多くのがん細胞は恒常的にNRF2を活性化する機構を進化させている。Purohitらは、膵がんで豊富に認められるATDC(ataxia-telangiectasia group D関連遺伝子)が細胞内のKEAP1と直接相互作用し、KEAP1-NRF2相互作用を阻害することで、プロテアソームを介した分解からNRF2を保護することを明らかにした。患者由来の膵管腺がん(PDAC)細胞株においてATDCをノックダウンすると、NRF2に依存した細胞の増殖および侵襲性が低下し、ROSが増加した。PDAC細胞株における野生型ATDCの過剰発現は、細胞の増殖と浸潤性を亢進してNRF2存在量を増加させた一方で、KEAP1と結合できない切断型ATDCの過剰発現は、そのような影響を示さなかった。野生型ATDC、切断型ATDC、NRF2、ならびにATDCまたはNRF2を標的とするshRNAを、さまざまな組み合わせで発現しているPDAC細胞を用いたマウス同所移植実験から、ATDCがNRF2依存的に腫瘍の増殖および転移を促進していることが確認された。ATDCを発現しているPDAC細胞および腫瘍のROS誘導性化学療法薬ゲムシタビンに対する抵抗性は、in vitroとin vivoの両方でNRF2に依存していた。PDAC検体中のATDCの存在量は、患者の生存率と負の相関をもっていた。まとめるとこれらの結果は、ATDCを介したKEAP1依存性NRF2分解の阻害は、PDACの侵攻性、およびゲムシタビンなどの化学療法に対するPDACの抵抗性の生じやすさに寄与していることを示唆している。