腸から脳へのTRAIL

A TRAIL from gut to brain

Editor's Choice

Sci. Signal. 23 Feb 2021:
Vol. 14, Issue 671, eabh1677
DOI: 10.1126/scisignal.abh1677

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: jfoley@aaas.org

L. M. Sanmarco, M. A. Wheeler, C. Gutiérrez-ázquez, C. M. Polonio, M. Linnerbauer, F. A. Pinho-Ribeiro, Z. Li, F.Giovannoni, K. V. Batterman, G. Scalisi, S. E. J. Zandee, E. S. Heck, M. Alsuwailm, D. L. Rosene, B. Becher, I. M.Chiu, A. Prat, F. J. Quintana, Gut-licensed IFNγ+ NK cells drive LAMP1+TRAIL+ anti-inflammatory astrocytes. Nature 590, 473-479 (2021).
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33408417/ [PubMed]

腸内細菌叢にライセンスされたナチュラルキラー細胞が、TRAIL+アストロサイトの集団を駆動して、脳内の炎症を軽減する。

要約

アストロサイトは、中枢神経系(CNS)において、神経活動の調節や代謝のサポートなどのさまざまな役割を果たすグリア細胞である。アストロサイト機能の調節不全が、多数の神経疾患や神経炎症の基礎にある。Sanmarcoらは、アストロサイトのサブセットと機能状態の多様性に注目し、これらの細胞が果たしうる抗炎症性の役割を検討した。フローサイトメトリー分析により、リソソーム膜タンパク質1(LAMP1)がマウス脊髄アストロサイトにもっとも豊富に存在するマーカーであり、多発性硬化症のマウスモデルであるEAEにおいては、その存在量がさらに増加することが明らかになった。アストロサイトのLAMP1をノックアウトすると、EAEの症状が悪化し、CNSにおける炎症促進性CD4+ T細胞の数が増加した。LAMP1欠損マウスのアストロサイトには、細胞表面のデスレセプターリガンドであるTRAILが少なかった。マウスアストロサイトのTRAILをノックアウトすると、CNSに動員されたCD4+ T細胞においてアポトーシス促進性のカスパーゼ-3の活性化が低下し、EAEマウスにおけるLAMP1欠損の効果の表現型が再現された。ナイーブマウスにおけるLAMP1+TRAIL+アストロサイトの単一細胞RNA-seq解析により、サイトカインIFN-γによるシグナル伝達に関連する転写シグネチャーが明らかになった。In vitroでアストロサイトをIFN-γにより処理すると、TRAIL mRNA発現が増加したが、これは、EAEにおいてCNSに動員されたCD4+T細胞が産生する炎症性サイトカインであるTNFとIL-1αによって抑制された。免疫染色とin situハイブリダイゼーションにより、TRAIL+アストロサイトは、ナイーブマウスの髄膜において、IFN-γを産生するナチュラルキラー(NK)細胞の近傍に局在することが明らかになった。これらのNK細胞を除去すると、髄膜におけるTRAIL+アストロサイトの数が減少した。著者らは、腸内マイクロバイオームがNK細胞のIFN-γ産生を誘導することに着目し、無菌マウスにおいて、特定病原体除去マウスと比較して、髄膜のIFN-γ+ NK細胞とTRAIL+アストロサイトが少ないことを見出した。最後に、抗生物質による除菌と糞便細菌叢移植の実験によって、髄膜におけるTRAIL+アストロサイト数を維持するために、マイクロバイオームが必要であることが確認された。細胞追跡実験では、NK細胞が小腸から髄膜に移動することと、抗生物質処理によってこれらの細胞におけるIFN-γ発現が低下することが示された。総合すると、これらのデータからは、マイクロバイオームにライセンスされたIFN-γ+ NK細胞が、CNSにおいてアストロサイトのTRAIL+集団を維持し、T細胞のアポトーシスを誘導することによって、炎症を軽減することが示唆される。

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