ポリアミンが分散を決定

Polyamines determine dispersal

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Science Signaling 04 May 2021:
Vol. 14, Issue 681, eabj2318
DOI: 10.1126/scisignal.abj2318

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org

A. A. Bridges, B. L. Bassler, Inverse regulation of Vibrio cholerae biofilm dispersal by polyamine signals. eLife 10, e65487 (2021).
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33856344/

環境中のポリアミンのモニタリングがコレラ菌バイオフィルムの分散を制御している

要約

細菌はバイオフィルム内で生存することで資源を集合的に利用し、存在に関わる脅威に対抗しているものの、細胞はバイオフィルムから離れて新たな場所に分散できなければならない。BridgesとBasslerは、コレラ菌(Vibrio cholerae)バイオフィルムからの分散を制御しているキューの1つとして、ポリアミンを同定した。ポリアミンセンサーMbaAまたはポリアミン取り込み輸送体PotD1の変異は、分散を抑制し、細胞質中のc-di-GMP(バイオフィルム形成を促進して運動性を抑制するセカンドメッセンジャー)を増加させた。またポリアミンであるスペルミジンはc-di-GMPを減少させて分散を促進したが、一方でノルスペルミジン(ビブリオ属菌により産生される非定型ポリアミン)は、c-di-GMPを増加させて分散を阻害した。MbaAは、ペリプラズムのポリアミンセンサードメインと細胞質側のジグアニル酸シクラーゼおよびホスホジエステラーゼドメインを有する膜貫通タンパク質であり、このことは、ポリアミンに応答したc-di-GMPの合成と分解の両方を触媒することが可能であることを示唆している。いずれの触媒ドメインもポリアミンを介した分散の制御に必要であり、ペリプラズムの高濃度ノルスペルミジンはc-di-GMPの生合成を優位にし、スペルミジンの存在または低濃度のノルスペルミジンはc-di-GMPの分解を優位にする。細胞質中のスペルミジンとノルスペルミジンの量は分散に影響しなかったものの、高い細胞密度にある細胞は、多量のノルスペルミジンを環境中に放出した。PotD1はノルスペルミジンの放出とペリプラズムからの再取り込みの間の平衡を制御することで、分散に寄与していた。バイオフィルム中に留まるか分散するかという決定に環境中のポリアミンがなぜ重要なのかは依然として不明であるが、ビブリオ属菌にとっておおむね良好な条件のとき、ノルスペルミジンの存在がバイオフィルムの維持を促進する一方で、あらゆる細菌種により産生されるスペルミジンが大量のときは、分散を促進して競合を抑制している可能性がある。

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