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腫瘍におけるリソソームの優位性を利用する

Exploiting lysosomal advantage in tumors

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
2 Nov 202 Vol 14, Issue 707
DOI: 10.1126/scisignal.abn0232

LESLIE K. FERRARELLI

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: lferrare@aaas.org

W. Du, M. Gu, M. Hu, P. Pinchi, W. Chen, M. Ryan, T. Nold, A. Bannaga, H. Xu, Lysosomal Zn2+ release triggers rapid, mitochondria-mediated, non-apoptotic cell death in metastatic melanoma. Cell Rep. 37, 109848 (2021).
CROSSREF  PUBMED  GOOGLE SCHOLAR

リソソームZn2+放出チャネルの選択性をさらに刺激すると、転移性メラノーマ細胞が殺傷される。

要約

リソソームは、増殖と細胞運動を支える代謝のハブである。したがって、がん細胞ではリソソームの機能と調節機構が増強されている場合が多い。しかし、リソソームを広く標的にすると、腫瘍と健常細胞の両方が殺傷される可能性がある。Duらは、腫瘍におけるリソソームの優位性を、腫瘍の不利になるようする方法を見出した。転移性メラノーマでは、正常皮膚および良性母斑と比べて、さまざまな腫瘍型の増殖に関与する非選択的リソソームカチオンチャネルTRPML1の存在量が増大していた。培養中の転移性メラノーマ細胞株と非がん性であるが不死化されたメラノサイトとの間でも、存在量とチャネル活性の両方について同様の結果が認められた。TRPML1阻害剤は細胞傷害効果をほとんど示さなかった。しかし、TRPML1の合成アゴニスト(ML-SA)はメラノーマ細胞に対して選択的毒性を示した。正常細胞にTRPML1を過剰発現させると、ML-SAへの感受性が付与され、リソソームZn2+依存的にミトコンドリア機能不全が誘導され、その結果として壊死性細胞死が生じた。皮膚と脳に転移性メラノーマ異種移植片を有すマウスでは、ML-SAの全身投与によって腫瘍の増殖が抑制され、個体の生存率が上昇した。これらの結果から、TRPML1の合成アゴニストが、転移性メラノーマを治療する腫瘍選択的治療法となる可能性が示唆される。

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2021年11月2日号

Editor's Choice

腫瘍におけるリソソームの優位性を利用する

Research Article

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