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レジオネラはミトコンドリアに狙いを定める
Legionella takes aim at mitochondria
SCIENCE SIGNALING
15 Feb 2022 Vol 15, Issue 721
DOI: 10.1126/scisignal.abo5437
ANNALISA M. VANHOOK
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org
J. Fu, M. Zhou, M. A. Gritsenko, E. S. Nakayasu, L. Song, Z.-Q. Luo, Legionella pneumophila modulates host energy metabolism by ADP-ribosylation of ADP/ATP translocases. eLife 11, e73611 (2022).
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レジオネラ(Legionella)の病原因子が、感染細胞においてミトコンドリアのADP/ATP交換を阻害する。
細胞内病原菌であるレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)は、何百もの病原因子を宿主細胞に注入する。これらの因子は多様な細胞過程を標的とし、空胞を産生して維持する。この空胞は細菌が増殖する場となり、ミトコンドリアと密接に関連していることが多い。Fuらは、病原因子の1つであるCeg3はモノADPリボシルトランスフェラーゼであり、ヒト細胞で発現させるとミトコンドリアに局在化することを見出した。Ceg3は、ミトコンドリアで産生されたATPを細胞質ADPと交換する、ヒトADP/ATPトランスロカーゼの4つのアイソフォームANT1からANT4(それぞれSLC25A4、-5、-6、-31としても知られる)のすべてと相互作用した。酵母およびヒト細胞において、Ceg3は、真核生物ホモログの間で保存されている残基(ANT1のArg236)を標的として、ANTをモノADPリボシル化した。ANTのADPリボシル化は、野生型L. pneumophilaに感染したヒト細胞において認められたが、触媒不活性型のCeg3を発現する菌株または機能的な病原因子分泌系を欠損した菌株に感染した細胞では認められなかった。この修飾により、ANTを介するADP-ATP交換が阻害されたが、ANTを介するマイトファジー誘導には影響がなかった。ミトコンドリアの酸化的リン酸化と細胞質の解糖を定量化する実験は実施されなかったが、このADP-ATP交換の減少により酸化的リン酸化が減少し、そのために感染細胞はATP産生を解糖に頼らざるを得なくなると考えられる。もう1つのL. pneumophila病原因子であるMitFも、解糖への移行を誘導するが、その経路はミトコンドリア断片化の促進であり、病原体を介する宿主細胞エネルギー代謝の修飾が、病原性を支えるために重要であることが強調される。