腸内のAGEによる脳の老化

Brain aging by gut AGE

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
5 Apr 2022 Vol 15, Issue 728
DOI: 10.1126/scisignal.abq3005

LESLIE K. FERRARELLI

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: lferrare@aaas.org

O. Mossad, B. Batut, B. Yilmaz, N. Dokalis, C. Mezö, E. Nent, L. S. Nabavi, M. Mayer, F. J. M. Maron, J. M. Buescher, M. G. de Agüero, A. Szalay, T. Lämmermann, A. J. Macpherson, S. C. Ganal-Vonarburg, R. Backofen, D. Erny, M. Prinz, T. Blank, Gut microbiota drives age-related oxidative stress and mitochondrial damage in microglia via the metabolite N6-carboxymethyllysine. Nat. Neurosci.25, 295-305 (2022).
CROSSREF  PUBMED  ISI  GOOGLE SCHOLAR

J. W. Bostick, S. K. Mazmanian, Impaired gut barrier affects microglia health. Nat. Neurosci.25, 268-270 (2022).
CROSSREF  PUBMED  ISI  GOOGLE SCHOLAR

終末糖化産物(AGE)が腸内細菌叢、リーキーガット、そしてミクログリアの老化を結びつけている。

発達段階および成人期では腸内細菌叢が脳機能と関連していること、また腸内細菌叢の構成は年齢とともに変化することが、ますます明らかになっている。Mossadらは、老化する腸と老化する脳をつなぐものとしてマイクロバイオームを検討した。その知見は、加齢に伴う神経機能障害には「リーキーガット」(腸管壁浸漏)が寄与していることを支持するようである(Bostick and Mazmanianの論文も参照)。著者らは、腸内細菌叢を有する、または有していない若齢成体および老齢マウスを用い、脳組織、血清およびミクログリア(加齢とともに機能が低下する脳常在性の免疫細胞)を分析した。これらの比較から、ミクログリアの加齢に伴うトランスクリプトーム、代謝および表現型の変化には、腸内細菌叢が直接寄与していることが明らかにされた。老齢マウスにおける腸内細菌叢の存在は、その脳および血清中の終末糖化産物(AGE:糖化修飾されるタンパク質および脂質)の存在量の増加と関連していた。AGEであるN6-カルボキシメチルリジン(CML)は、老齢マウスにおけるミクログリアの酸化ストレスおよびミトコンドリアの機能不全に伴って増加した。ただし、無菌マウスでは正常な腸内細菌叢をもつマウスと比べてその糞便中のCML量が多いことから、腸内細菌叢は血清および脳内のCML量を間接的に増加させることが示唆された。老齢マウスでは腸管バリア機能が傷害され腸管透過性が亢進していた(ヒトでは「リーキーガット」と称されることが増えている)が、老齢の無菌マウスでは若齢成体マウスと同様の腸管バリアの健全性がみられた。若齢成体マウスを用い、腸を回避するため(経口ではなく)腹腔内にCMLを注射すると、そのミクログリアに老齢マウスの表現型が誘導された。また、若齢成体の無菌マウスに対して老齢マウス由来の微生物叢を定着させると、腸管透過性の亢進およびCML陽性ミクログリアの増加が生じた。まとめるとこれらのデータは、この機構には腸管バリアが不可欠であるばかりでなく、腸内細菌叢がバリア機能の加齢性の低下を媒介し、AGEの血流漏出と脳内ミクログリア機能の傷害を可能にすることも示している。同様にヒト血液試料中のCML量も年齢と関連しており、マウスで認めたこのような加齢に関する腸-脳軸はヒトにも関連している可能性を示唆している。

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