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大環状ペプチドによる調節

Modulation by macrocyclic peptides

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
25 Oct 2022 Vol 15, Issue 757
DOI: 10.1126/scisignal.adf4115

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: jfoley@aaas.org

S. A. Dai, Q. Hu, R. Gao, E. E. Blythe, K. K. Touhara, H. Peacock, Z. Zhang, M. von Zastrow, H. Suga, K. M. Shokat, State-selective modulation of heterotrimeric Gαs signaling with macrocyclic peptides. Cell 185, 3950-3965.e25 (2022).

細胞透過性の大環状ペプチドが、活性または不活性状態のGαsに拮抗してシグナル伝達を微調整する。

ヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)は、リガンドが結合したGタンパク質共役受容体(GPCR)からさまざまな下流シグナル伝達経路にシグナルを伝達する。基本条件下では、Gタンパク質αサブユニットがGDPに結合し、Gβγ二量体と複合体を形成する。GPCRが活性化すると、GTPがαサブユニットのGDPに取って代わり、その結果βγ二量体から分離し、異なるエフェクターが活性化される。αサブユニットの固有のGTPアーゼ活性によってGDPが生成し、ヘテロ三量体が再編成され、シグナル伝達は停止する。GPCRによって仲介される生理学的過程の範囲を考えると、それらの経路の構成成分を薬理学的に標的にすることは優先順位が高い。しかし、Gタンパク質そのものを標的にすることは、困難であることがわかっている。Daiらは、環状ペプチドのk化合物ライブラリをスクリーニングし、それぞれ活性状態と不活性状態のGαsを標的とする、GN13とGD20の2つの大環状ペプチドを発見した。GN13環状ペプチドは、Gαsがそのエフェクターであるアデニリルシクラーゼ(AC)と相互作用することを妨げ、膜画分におけるβ2アドレナリン受容体(β2AR)を介するAC活性化と、それに続くセカンドメッセンジャーcAMPの生成を阻害した。細胞透過型のGN13は、HEK293細胞においてβ2AR依存性のcAMP生成を阻害した。結晶構造解析により、GN13は、GαsのACとの相互作用に関与する領域に結合することが示された。一方、GD20環状ペプチドは、GDPと結合した不活性型のGαsに特異性を示し、その結合が、GDPのGαsからの解離に拮抗した。GD20は、GαsとGβγ二量体の結合も阻害した。さらなる研究により、GN13およびGD20は、Gαi、Gα12/13およびGαqタンパク質よりもGαsタンパク質に高い特異性を示すことがわかった。細胞透過型のGD20(cpGD20)は、細胞内のβ2AR依存性AC活性化を阻害しなかった。しかし、生物発光共鳴エネルギー移動分析では、cpGD20が、Gタンパク質活性化後にGDP結合Gαsを捕捉し、Gβγとの再会合を阻害することが示された。結果としてcpGD20は、細胞内で受容体依存性のGβγ特異的シグナル伝達を延長させた。総合するとこれらの結果は、個別の細胞透過性環状ペプチドが、ヌクレオチド状態選択的にGαsに結合し、GαsとGβγ二量体の両方によるシグナル伝達を調節することを示しており、Gタンパク質阻害剤のさらなる開発に役立つものと考えられる。

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