蚊を引きつける力の機構

Mechanisms of mosquito magnetism

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
22 Nov 2022 Vol 15, Issue 761
DOI: 10.1126/scisignal.adf8520

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: wwong@aaas.org

M. E. De Obaldia, T. Morita, L. C. Dedmon, D. J. Boehmler, C. S. Jiang, E. V. Zeledon, J. R. Cross, L. B. Vosshall, Differential mosquito attraction to humans is associated with skin-derived carboxylic acid levels. Cell 185, 4099-4116.e13 (2022).

J. Zhao, J. Del Mármol, Why are some people more attractive to mosquitoes than others? Cell 185, 4040-4042 (2022).

ヒトを蚊にとって魅力的にする、皮膚由来の化合物がいくつか同定されている。

不運にも蚊のネッタイシマカ(Aedes aegypti)にとって並外れて魅力的な人がいる。De Obaldiaらは、蚊の嗜好性を決定する、ヒトと蚊の両方の因子を調べた(Zhaoとdel Mármolも参照)。著者らは、蚊が、臭気を集めるために前腕に装着されたナイロンに対し、そのナイロンを装着したヒトに対するときと同じ順位の嗜好性を保持し、嗜好性の順位は何ヵ月にもわたって安定したままであることを見出した。嗅覚シグナルは、蚊において、116の嗅覚受容体(OR)と132のイオンチャネル型受容体(IR)によって検出され、いずれの受容体も共受容体サブユニットと会合する。共受容体サブユニットをコードするOrcoIr8aIr76bおよびIr25aを欠損または部分欠損した蚊は、野生型の蚊と同様の形で誘引性が高いヒトと低いヒトとを識別する能力を保持していたが、ヒトが装着したナイロンへのIr76bおよびIr25a変異体の誘引性は低下した。これらの結果は、蚊がヒトを識別することを可能にする感覚経路の冗長性を示唆している。IR共受容体サブユニットは酸性化合物の検出に関与するが、被験者が装着したナイロンの酸性化合物の分析により、誘引性が高いヒトの皮膚は、誘引性が低いヒトの皮膚と比べて、炭素数が10を超えるカルボン酸を多く生成することが明らかになった(1例の外れ値を除く)。これらの化合物には、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸などがあった。誘引性が高いヒトの臭気混合物への蚊の嗜好性は、希釈すると減弱したことから、皮膚で生成される誘引化合物の存在量によって誘引性が低いヒトと高いヒトとが識別されるという考え方が、さらに支持された。これらの結果は、蚊を誘引する、皮膚で生成される化合物のいくつかを明らかにしており、蚊媒介性疾患の制御を改善するための戦略をもたらす可能性がある。

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