免疫シナプスの抑制

A check on the immunological synapse

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
17 Jan 2023 Vol 16, Issue 768
DOI: 10.1126/scisignal.adg6157

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: jfoley@aaas.org

S.-C. Oh, S.-E. Kim, I.-H. Jang, S.-M. Kim, S. Y. Lee, S. Lee, I.-S. Chu, S. R. Yoon, H. Jung, I. Choi, J. Doh, T.-D. Kim, NgR1 is an NK cell inhibitory receptor that destabilizes the immunological synapse. Nat. Immunol. 10.1038/s41590-022-01394-w, (2023).

ナチュラルキラー細胞上のNogo受容体1を遮断すると標的細胞との接触が安定化されることによって細胞殺傷が促進される

ナチュラルキラー(NK)細胞は、腫瘍細胞を認識して死滅させる能力があるため、がん免疫療法に用いられる。NK細胞は、標的細胞に接着するために、接着分子、受容体、組織化された細胞骨格要素を含む超分子構造体である免疫シナプスを細胞膜に形成する。その後、細胞溶解性顆粒が極性化されて免疫シナプスで放出されると、標的細胞の溶解が引き起こされる。Nogo受容体1(NgR1)は、リガンドNogoAと結合し、アクチン細胞骨格に作用することによって軸索の伸長を制限する細胞表面タンパク質であるが、Ohらは、NgR1がNK細胞上で抑制性受容体として機能して免疫シナプスを不安定化させることを明らかにした。in vitroでは、NgR1ノックアウト(KO)マウス由来のNK細胞は、野生型マウス由来のNK細胞に比べて、高い細胞傷害性を示した。NgR1 KOマウスでは、対応する野生型マウスに比べて、腫瘍細胞を静脈内投与した後の転移性小結節が少なかった。ヒトNK細胞株をNgR1のアゴニストペプチドで処理すると、RhoAおよびキナーゼROCKが活性化され、それによってFアクチンの形成が促進された。標的細胞でNogoAを過剰発現させると、NK細胞を介した細胞障害は大幅に減少したが、この効果はNgR1のアンタゴニストペプチド(NEPI-40)で処理すると元に戻った。NK細胞とその標的の生細胞画像解析では、NgR1の遮断またはノックアウトによって、NK細胞とその標的の接触時間が増加し、細胞殺傷効率も向上することが示された。さらに、対照NK細胞では、NK細胞と標的の接触部からFアクチン重合が伸長し、一過性の細胞間相互作用が形成されたが、NEPI-40で処理されたNK細胞では、NK細胞と標的の接触部に向けてアクチン重合が伸長され、安定的な免疫シナプスの形成が維持された。マウス異種移植モデルでは、NK細胞およびNEPI-40を投与すると、NK細胞およびPBSを投与したマウスに比べて、腫瘍量が減少した。最後に、がん患者コホートの解析では、NogoをコードするRTN4の発現量の増加が生存率の低下に関連することが示された。まとめると、これらのデータは、NgR1がリガンドNogoAに応答してNK細胞上で抑制性受容体およびチェックポイントとして機能し、免疫シナプスの形成を妨害し、細胞傷害性を低下させることを示しており、NogoA-NgR1軸がNK細胞を介した免疫療法の有効性を高めるための治療標的となりうることを示唆している。

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2023年1月17日号

Editor's Choice

免疫シナプスの抑制

Research Article

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