• ホーム
  • ERタンパク質CREBH由来のヘパトカインが、リポタンパク質リパーゼ活性を刺激することでトリグリセリド代謝を促進する

ERタンパク質CREBH由来のヘパトカインが、リポタンパク質リパーゼ活性を刺激することでトリグリセリド代謝を促進する

A hepatokine derived from the ER protein CREBH promotes triglyceride metabolism by stimulating lipoprotein lipase activity

Research Article

SCIENCE SIGNALING
17 Jan 2023 Vol 16, Issue 768
DOI: 10.1126/scisignal.add6702

Hyunbae Kim1, Zhenfeng Song1, Ren Zhang1, Brandon S. J. Davies2, Kezhong Zhang1, 3, *

  1. 1 Center for Molecular Medicine and Genetics, Wayne State University School of Medicine, Detroit, MI 48201, USA.
  2. 2 Department of Biochemistry, Fraternal Order of Eagles Diabetes Research Center, and Obesity Research and Education Initiative, University of Iowa, Iowa City, IA 52242, USA.
  3. 3 Department of Biochemistry, Microbiology and Immunology, Wayne State University School of Medicine, Detroit, MI 48201, USA.

* Corresponding author. Email: kzhang@med.wayne.edu

ヘパトカインが脂肪分解を亢進する

血中のトリグリセリド量増加は、心血管疾患および脂肪肝疾患の発症リスク因子の1つである。Kimらは、肝臓から分泌され、脂肪分解および血中トリグリセリドの除去を刺激する、CREBH-Cと呼ばれる因子を同定した。マウスおよびヒトにおいて、CREBH-Cは、エネルギー需要の増加(絶食により誘導されるものなど)または肝臓へのストレス(肥満または動脈硬化促進性の高脂肪食に誘導されるものなど)に応じて生成され、肝臓から放出された。高脂肪食を給餌したマウスにCREBH-Cを投与すると、血中トリグリセリド量は減少し、非肝臓組織によるトリグリセリドの取込みが増加した。このようにCREBH-Cは、高トリグリセリド血症の治療薬としての開発が考えられるヘパトカインである。-WW

要約

小胞体(ER)に結合し肝臓で多く発現するストレスセンサーであるCREBHは、エネルギー需要の増加または肝臓へのストレスに応答して切断され、脂質およびグルコースの代謝因子をコードする肝臓遺伝子の転写因子として働く、アミノ末端フラグメントを放出する。本稿でわれわれは、膜結合型の完全長CREBHに由来するCREBHのカルボキシ末端フラグメント(CREBH-C)が、絶食または肝臓へのストレスに応じてヘパトカインとして分泌されることを明らかにした。CREBH-Cのエキソサイトーシスを介した効率的な分泌には、キナーゼCaMKIIに媒介されるCREBH-Cのリン酸化が必要であった。リポタンパク質リパーゼ(LPL)は、組織への取込みのための血中トリグリセリドの脂肪分解を媒介し、また、アンジオポエチン様因子(ANGPTL)3およびANGPTL8から構成される複合体によって阻害される。マウスにおいて、分泌されたCREBH-CはANGPTL3-ANGPTL8複合体の形成を阻害し、血漿および代謝組織中のLPL活性亢進を導いた。高脂肪食を給餌されたマウスにおいて、CREBH-Cの投与は、血漿からのトリグリセリドの除去および末梢組織への分配を促進し、高トリグリセリド血症および肝脂肪症を軽減した。肥満者では対照者と比べて血中のCREBH-C量が多く、また、ヒトにおけるCREBHの機能喪失変異は血漿中トリグリセリドの制御異常と関連していた。これらの結果から、CREBH由来のストレス誘導性分泌型タンパク質フラグメントが、LPL活性およびトリグリセリドの恒常性を刺激するヘパトカインとして働くことが明らかになった。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2023年1月17日号

Editor's Choice

免疫シナプスの抑制

Research Article

チロシンキナーゼ阻害剤はリソソーム損傷と細胞溶解を介して骨髄系細胞においてNLRP3インフラマソームを活性化することができる

ERタンパク質CREBH由来のヘパトカインが、リポタンパク質リパーゼ活性を刺激することでトリグリセリド代謝を促進する

最新のResearch Article記事

2024年4月9日号

前立腺がんにおいて脂質合成を阻害するとDNA損傷が誘導され、PARP阻害がもたらす細胞死が増加する

A型インフルエンザウイルス感染中にMiz1がI型インターフェロンの産生を抑制してウイルス除去を制限する

2024年4月2日号

フェリチンの重サブユニットは肝星細胞でICAM-1を介してNLRP3インフラマソームを刺激し、肝臓の炎症を促進する

2024年3月26日号

ミクログリア内のグルコシルセラミドの蓄積がマウスにおいてSTING依存性の神経炎症と神経変性を引き起こす

2024年3月19日号

運動によって誘導されるBDNFは運動後回復期に骨格筋脂質代謝のPPARδ依存性リプログラミングを促進する