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細菌増殖の促進により感染を除去

Eliminating infection by promoting bacterial growth

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
27 Jun 2023 Vol 16, Issue 791
[DOI: 10.1126/scisignal.adj3337]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling,AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org

S. Ronneau, C. Michaux, S. Helaine, Decline in nitrosative stress drives antibiotic persister regrowth during infection. Cell Host Microbe 31, 993-1006.e6 (2023).

宿主の活性窒素種が細胞内のサルモネラ(Salmonella)を抗菌薬耐性の生残状態に維持している。

低増殖性である細菌の部分集団は、特異的な耐性機構がなくとも抗菌薬治療に抵抗して生き残ることができる。これら生残菌細胞は抗菌薬中止後に増殖を再開できることから、慢性感染症に寄与している。マクロファージ内で積極的に増殖しているネズミチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)は、抗菌薬セフォタキシムに感受性をもつ。セフォタキシムは宿主細胞に浸透し、積極的に増殖している細菌のみを殺傷する一方で、生残菌は治療に抵抗して生き残る。Ronneauらは、一酸化窒素合成酵素2(Nos2)により生成される一酸化窒素由来の活性窒素種(RNS)が、マウスのマクロファージ内でサルモネラの生残状態を促進し、サルモネラ感染マウスモデルにおいて生残性を増強していることを見いだした。RNSは、増殖が停止した生残状態を誘導することはなかったが、細菌のトリカルボン酸(TCA)回路を抑制して生残状態を維持した。TCA回路とは独立して呼吸を刺激する代謝物で感染マクロファージを処理すると、細胞内細菌の増殖再開およびセフォタキシムへの感作を引き起こした。サルモネラ感染マクロファージではNos2およびNOが増加し、この増加が細菌にニトロソ化ストレスを誘導した。宿主のNO産生が減少すると、一部の細菌は増殖を再開してセフォタキシムに感受性を示すようになったが、一部の細菌は増殖停止状態にとどまった。感染マクロファージをNos2の薬理学的阻害剤で処理すると細胞内生残菌が増殖を再開し、さらに感染マウスにNos2阻害剤およびセフォタキシムを投与することで抗菌薬中止後の感染再発が減少した。これらの知見は、マクロファージのRNS産生を低下させる薬物、または細菌のニトロソ化ストレスを緩和する薬物が、患者において抗菌薬の有効性を高め感染再発を抑制する可能性を示唆している。

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