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イオンチャネルのハイファイブ

An ion channel’s high five

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SCIENCE SIGNALING
19 Sep 2023 Vol 16, Issue 803
[DOI: 10.1126/scisignal.adk8010]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: jfoley@aaas.org

S. Lansky, J. M. Betancourt, J. Zhang, Y. Jiang, E. D. Kim, N. Paknejad, C. M. Nimigean, P. Yuan, S. Scheuring, A pentameric TRPV3 channel with a dilated pore. Nature 621, 206-214 (2023).

U. A. Hellmich, Dynamic ion channel defies dogma. Nature 621, 46-47 (2023).

四量体状態と五量体状態の切り替わりによって、イオンチャネルTRPV3の孔径が調節される。

一過性受容器電位(TRP)チャネルファミリーのメンバーは、温度、味覚、疼痛の感知においてさまざまな刺激に応答するイオンチャネルである。TRPチャネル内の変異は、疼痛や神経疾患、代謝疾患に関与しており、TRPチャネルは魅力的な創薬標的となっている。これまで、TRPファミリーメンバーの構造研究ではすべて、これらのチャネルは四量体会合体をとり、その中心孔のサイズの変化によりイオン流動が調節されることが示されていた(Hellmichによる解説を参照)。しかし、Lanskyらは、高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)を用いて、熱により活性化されたチャネルTRPバニロイド3(TRPV3)が、脂質二重層で四量体会合体と五量体会合体の両方を形成しうることを示した。この五量体状態は一過性かつ可逆性で、両状態間の相互変換は、側方拡散によるプロトマーの交換を介して、数秒から数分のタイムスケールで生じた。さらなるHS-AFM測定により、五量体会合体の孔径は四量体会合体の孔径より大きいことが示され、五量体状態が、TRPV3の長期活性化後に発生するいわゆる細孔拡大現象において観察される、イオンコンダクタンスおよびサイズ透過性の増大を仲介する可能性が示唆された。TRPV3において細孔拡大を誘導するリガンドであるDPBAで処理すると、二重層における五量体会合体と自由に拡散するプロトマーの割合が増加した。クライオ電子顕微鏡により、五量体会合体の孔径は、開口状態で四量体会合体の孔径と比較して2倍より大きいことが示された。これらのデータを総合すると、TRPV3は、プロトマー交換を介して、孔径がより大きな五量体状態をとりうることが示唆される。この会合体が細孔拡大現象の原因であるかどうかを判断するためには、さらなる実験が必要である。

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