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ストレスがT細胞を消耗させる

Stress exhausts T cells

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
3 Oct 2023 Vol 16, Issue 805
[DOI: 10.1126/scisignal.adl0724]

Amy E. Baek

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org

A.-M. Globig, S. Zhao, J. Roginsky, V. I. Maltez, J. Guiza, N. Avina-Ochoa, M. Heeg, F. A. Hoffman, O. Chaudhary, J. Wang, G. Senturk, D. Chen, C. O'Connor, S. Pfaff, R. N. Germain, K. A. Schalper, B. Emu, S. M. Kaech, The β1-adrenergic receptor links sympathetic nerves to T cell exhaustion. Nature 10.1038/s41586-023-06568-6 (2023).

ストレスに伴うカテコラミンは、β1-アドレナリン受容体を介してT細胞消耗を促進する。

T細胞は感染やがんに対する免疫応答の開始に不可欠であるが、慢性的な抗原曝露後には消耗し、エフェクター機能を失うことがある。T細胞はアドレナリン受容体を発現すること、またT細胞応答は少なくとも間接的に、交感神経系の影響を受ける可能性があることから、Globigらは、マウスにおけるアドレナリン作動性ストレスシグナル伝達が、T細胞を直接調節するかどうかを検討した。アドレナリンとノルアドレナリンに応答するGタンパク質共役受容体であるβ1-アドレナリン受容体(ADRB1)をコードするAdrb1が、消耗したCD8+ T細胞とより分化したT細胞において発現が増加する遺伝子の1つであった。マウス膵がんでは、消耗マーカーを有するT細胞が交感神経の近傍に濃縮した。ADRB1は、CD8+ T細胞においてアデノシン3′,5′-一リン酸(cAMP)とcAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)を介してシグナルを伝達し、Adrb1の過剰発現によって、CD8+ T細胞受容体の活性が抑制され、消耗が促進された。逆に、Adrb1をノックアウトすると、より終末分化したエフェクターを産生する能力を介してT細胞応答を持続させる、消耗したT細胞の前駆細胞の維持が可能になった。β-遮断薬によりADRB1を薬理学的に阻害すると、cAMPおよびCREMの活性が低下し、終末的に消耗したT細胞の生成が減少した。メラノーマ担がんマウスに、β-遮断薬と免疫チェックポイント阻害(ICB)療法薬を併用投与すると、CD8+ T細胞によるサイトカイン産生が増加した。ICB療法に非感受性の膵管腺がんの同所移植マウスモデルでは、ICBと非選択的β-遮断薬の併用により、腫瘍増殖が抑制され、腫瘍内のCD8+ T細胞数が増加した。総合すると、これらの結果は、ストレスシグナル伝達とT細胞応答の直接的な関係を強調している。

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2023年10月3日号

Editor's Choice

ストレスがT細胞を消耗させる

Research Article

シグナル伝達ダイナミクスにより高優先度と低優先度の好中球化学誘引物質受容体を区別する

免疫チェックポイント受容体LAG3によるリガンド依存性のTCRシグナル伝達の抑制は細胞質内RRFSALEモチーフに依存する

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