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シグナル伝達ダイナミクスにより高優先度と低優先度の好中球化学誘引物質受容体を区別する

Signaling dynamics distinguish high- and low-priority neutrophil chemoattractant receptors

Research Article

SCIENCE SIGNALING
3 Oct 2023 Vol 16, Issue 805
[DOI: 10.1126/scisignal.add1845]

Stefan M. Lundgren, Briana L. Rocha-Gregg, Emel Akdoğan, Maya N. Mysore, Samantha Hayes, Sean R. Collins*

Department of Microbiology and Molecular Genetics, University of California, Davis, Davis, CA 95616, USA.

* Corresponding author. Email: srcollins@ucdavis.edu

† These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

好中球は、Gαiタンパク質を活性化する受容体に結合する複数の化学誘引物質に同時にさらされる。Lundgrenらは、好中球がどのようにある化学誘引物質に対する応答を他の化学誘引物質に対してよりも優先するかを調べた。初代ヒト好中球および好中球細胞株では、優先度の高い化学誘引物質(感染または損傷部位から放出されるもの等)によって開始されるシグナル伝達は、優先度の低い化学誘引物質(炎症部位から放出されるもの等)によって誘導されるシグナル伝達よりも長く持続した。低優先度の化学誘引物質に対する受容体の下流のシグナル伝達が急速に弱まるには、受容体のC末端尾部にある2つの部位のリン酸化が必要であった。これらの結果を総合すると、好中球が共通のシグナル伝達経路を活性化する化学誘引物質をどのようにランク付けするかが明らかになる。—Wei Wong

要約

ヒト好中球は複数の化学誘引物質に応答して血管系から感染および損傷部位への遊走を誘導し、そこで病原体を除去し炎症を増幅する。この複雑なナビゲーション時に応答の焦点を適切に絞るため、好中球は、宿主細胞によって分泌されるロイコトリエンLTB4などの長距離炎症シグナルよりも、病原体および損傷由来のシグナルを優先する。異なる化学誘引物質は、その受容体が同じGタンパク質のGαiファミリーに共役していても、質的に異なる遊走様式を駆動しうる。本稿では、生細胞イメージングを用いて、シグナル伝達ダイナミクスにおいて応答が異なることを実証した。優先度の低い化学誘引物質は一過性の反応を引き起こしたのに対し、優先度の高い化学誘引物質に対する応答は持続した。われわれは、主要な分泌調節因子であるCa2+と、極性と細胞操縦の主要な調節因子であるCdc42によって媒介される下流シグナル伝達について、初代好中球と分化したHL-60細胞の両方でこの違いを観察した。LTB4に応答したCdc42活性化の急速な減衰は、エンドサイトーシスとは独立して、その受容体LTB4Rのカルボキシル末端尾部にあるリン酸化部位Thr308およびSer310に依存していた。これらの残基のアラニンへの変異は、遊走持続性における化学誘引物質依存性の差には影響を及ぼさなかったが、化学誘引物質の優先順位付けを損なった。これらの結果は、共有シグナル伝達経路の異なる時間的調節が受容体を区別し、化学誘引物質の優先順位付けに寄与することを示している。

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