ベージュは減量維持の色

Beige is the color of keeping weight off

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
21 Nov 2023 Vol 16, Issue 812
[DOI: 10.1126/scisignal.adm9735]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: wwong@aaas.org

H.-Y. Zhou, X. Feng, L.-W. Wang, R. Zhou, H. Sun, X. Chen, R.-B. Lu, Y. Huang, Q. Guo, X.-H. Luo, Bone marrow immune cells respond to fluctuating nutritional stress to constrain weight regain. Cell Metab. 35, 1915-930.e8 (2023).

J. Yan, C. Hu, Bone marrow immune cells stop weight regain. Cell Metab. 35, 1845-1846 (2023).

減量によって誘導される単球の集団が白色脂肪のベージュ化を促進して体重の再増加を制限する。

減量後はいとも簡単に体重が再増加する。体重の減少が10%を超えるときはなおさらである。Zhouらは、減量がきっかけで体重の再増加を制限する単球の集団形成が引き起こされることを見出した(Yan and Huも参照)。マウスに高脂肪食を与えたあと、高脂肪食を継続するか、通常の固形飼料食に切り替えた。高脂肪食から通常の固形飼料食に切り替えたことによって体重が減少したマウスから採取した骨髄を移植されたマウスは、高脂肪食による体重増加と他の代謝性有害作用から部分的に保護された。白色脂肪組織は「ベージュ化」と呼ばれる過程によって褐色脂肪組織の発熱性の特徴の一部を獲得できる。移植を受けたマウスの鼠径部の白色脂肪組織では褐色脂肪組織関連遺伝子の発現が促進されていて、これは移植を受けたマウスにおける酸素消費とエネルギー消費の増加と関連した。体重が減少したマウスの単一細胞RNAシーケンシング解析で、前駆体マーカーであるCd7およびFlt3(受容体チロシンキナーゼをコードする)が高発現している単球の集団を同定した。体重が10%以上減少した男性では、痩せている男性または肥満男性に比べて、CD7+単球の割合が高かった。高脂肪食から通常の固形飼料食に切り替えて体重が減少したマウスでは、高脂肪食による再負荷中のCD7+単球の減少によって、より大幅な体重の再増加と体脂肪量の増大が引き起こされ、鼠径部の白色脂肪組織内の褐色脂肪組織マーカーの発現量が減少した。CD7+単球は、走化性受容体GPR183および免疫抑制性サイトカインFGL2に依存する形で骨髄から鼠径部の白色脂肪組織へと移動した。マウスをFGL2で処置すると、鼠径部の白色脂肪組織内の褐色脂肪組織マーカーの発現が増加し、高脂肪食による体重の増加が制限されたが、マクロファージ特異的にFgl2を欠損させたマウスでは、高脂肪食による体重増加が促進された。さらに、10%を超える減量を維持している個体では、減量後に体重が再増加した個体に比べて、白色脂肪組織内のCD7+単球量が多かった。マウスにFLT3リガンドを投与すると、CD7+単球の発生頻度が増加し、高脂肪食による体重の再増加が防止されたが、この効果はCD7+単球の欠損によって消失した。これらの結果は、その誘導が減量維持を補助し得る単球の集団を同定するものである。

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