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腸管グリアが腸の侵害受容器との細胞間シグナル伝達を介して炎症中の内臓知覚過敏を促進する
Enteric glia promote visceral hypersensitivity during inflammation through intercellular signaling with gut nociceptors
SCIENCE SIGNALING
21 Nov 2023 Vol 16, Issue 812
[DOI: 10.1126/scisignal.adg1668]
Wilmarie Morales-Soto1, Jacques Gonzales1, William F. Jackson2, Brian D. Gulbransen1, *
- 1 Department of Physiology, Neuroscience Program, Michigan State University, East Lansing, MI 48824 USA.
- 2 Department of Pharmacology and Toxicology, Michigan State University, East Lansing, MI 48824 USA.
* Corresponding author. Email: gulbrans@msu.edu
Editor's summary
腸管の炎症に伴う疼痛は、身体を衰弱させ、慢性かつ管理が困難である可能性がある。Morales-Sotoらは、局所のグリア細胞がこの炎症性疼痛の主な寄与因子である可能性を見いだした。マウス腸管への炎症の誘導により、腸管グリアからのプロスタグランジンE2の分泌が惹起された。これにより、腸管を神経支配している感覚ニューロン上の受容体が活性化し、この活性化がなければ侵害性ではない刺激に対してニューロンを感作させた。炎症がない状態でグリアを活性化しても、ニューロンを刺激したり、内臓痛が生じることはなかった。これらの知見から、特異的に炎症と関連しており、治療標的になる可能性がある、腸管内の細胞および分子的な発痛源が明らかとなった。—Leslie K. Ferrarelli
要約
腸の炎症は管理困難な腹痛を引き起こす。腸管を神経支配している感覚ニューロンの終末は、グリアに囲まれている。本稿では急性大腸炎のマウスモデルを用い、腸管グリアが、腸管を神経支配している感覚ニューロンを炎症に対して感作させる因子を分泌することで、内臓痛に寄与していることを見いだした。雌雄のマウスにおいて、急性大腸炎は腸内の炎症促進性サイトカインの産生の一過性増加を誘導した。これらサイトカインのうちIL-1βは一部、グリアにより産生され、グリアの細胞間連絡に係わるヘミチャネル・コネキシン-43の開口を増強した。これは雌マウスにおいて、通常は無害な刺激を有痛性にした。グリアの化学遺伝学的活性化と神経終末のカルシウムイメージングを組み合わせた研究から、グリアは、炎症状況下のみで神経支配されている腸の侵害受容器を感作することが実証された。このような炎症性のグリア誘導による内臓知覚過敏は、グリアのCOX-2酵素の存在量増加を伴い、その結果として、感覚神経終末のEP4受容体を活性化するプロスタグランジンE2の産生および放出が増加した。大腸炎モデルマウスから採取した組織検体では、EP4受容体の遮断により、グリア刺激に対する侵害受容器の感度が低下し、さらに雌マウスでは、グリアのコネキシン-43の阻害により、IL-1βにより誘導される内臓知覚過敏が軽減した。これらの知見は、腸管グリア-ニューロン間のシグナル伝達を標的とする治療により、炎症性疾患に起因する内臓痛を緩和できる可能性を示唆している。