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TBはDNA修復を障害する
TB impairs DNA repair
SCIENCE SIGNALING
19 Dec 2023 Vol 16, Issue 816
[DOI: 10.1126/scisignal.adn5031]
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org
S. Liu, L. Guan, C. Peng, Y. Cheng, H. Cheng, F. Wang, M. Ma, R. Zheng, Z. Ji, P. Cui, Y. Ren, L. Li, C. Shi, J. Wang, X. Huang, X. Cai, D. Qu, H. Zhang, Z. Mao, H. Liu, P. Wang, W. Sha, H. Yang, L. Wang, B. Ge, Mycobacterium tuberculosis suppresses host DNA repair to boost its intracellular survival. Cell Host Microbe 31, 1820-1836.e10 (2023).
B. T. S. A. Madduri, S. L. Bell, Bug in the code: TB blocks DNA repair. Cell Host Microbe 31, 1769-1771 (2023).
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)病原性因子は、DNA修復を阻害することによって泡沫細胞形成を促進する。
結核菌(Mycobacterium tuberculosis、Mtb)病原性因子は、宿主細胞の多数の生物学的側面を操作し、細菌が肺胞マクロファージで生存および複製できるようにする。結核の特徴は、Mtbが栄養に利用する脂質を豊富にもつマクロファージである、泡沫細胞が存在することである。Liuらは、分泌型のMtb病原性因子であるウレアーゼC(UreC)が、DNA修復を阻害することによって、泡沫細胞の形成に寄与することを見出した。UreCを欠損した(ΔUreC)Mtb株を感染させたマウスの肺では、野生型Mtbを感染させたマウスの組織と比較して、炎症が軽く、細胞内細菌が少なかった。初代培養マウスマクロファージでは、ΔUreC Mtbの感染により、野生型細菌を感染させた細胞と比較して、細胞内細菌の数、小核の形成、脂肪滴の蓄積が軽減した。Mtb感染はDNA損傷を引き起こし(MadduriとBellによる解説を参照)、小核はゲノム不安定性の指標であるが、UreCはマウスマクロファージまたは培養ヒト細胞においてDNA損傷を引き起こさなかった。代わりに、UreCはATPアーゼのRUVBL2と相互作用し、RUVBL2がパートナーであるRUVBL1およびRAD51と機能的なDNA修復複合体を形成するのを妨げることによって、DNA修復を阻害した。このようなDNA修復の抑制により小核形成がもたらされ、小核が細胞質DNAを感知するcGAS-STING経路を刺激し、その結果インターフェロン-β(IFN-β)が産生されて、IFN-βが、機構は不明であるが、マクロファージに脂肪滴を蓄積させた。RUVBL2を骨髄特異的に条件的ノックアウトしたマウスを用いた感染実験により、in vitroで定義された機構が裏付けられた。UreCのRUVBL2への結合は、UreCの触媒活性に依存した。Mtb感染マウスに、尿路感染や腎結石の治療に用いられるウレアーゼ阻害剤のアセトヒドロキサム酸を投与すると、肺における細菌負荷が減少した。したがって、MtbはDNA損傷を誘発するだけでなく、DNA修復の阻害も行うことによって、DNA損傷に誘導される自然免疫シグナル伝達を引き起こし、泡沫細胞形成を促進する。