• ホーム
  • パルミトイル化が孔の形成を促進する

パルミトイル化が孔の形成を促進する

Palmitoylation promotes pores

Editors' Choice

SCIENCE SIGNALING
25 Jun 2024 Vol 17, Issue 842
DOI: 10.1126/scisignal.adr1306

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: jfoley@aaas.org.

G. Du, L. B. Healy, L. David, C. Walker, T. J. El-Baba, C. A. Lutomski, B. Goh, B. Gu, X. Pi, P. Devant, P. Fontana, Y. Dong, X. Ma, R. Miao, A. Balasubramanian, R. Puthenveetil, A. Banerjee, H. R. Luo, J. C. Kagan, S. F. Oh, C. V. Robinson, J. Lieberman, H. Wu, ROS-dependent S-palmitoylation activates cleaved and intact gasdermin D. Nature 630, 437-446 (2024).

未切断または切断後のガスダーミンDのパルミトイル化が細胞膜の孔の形成を引き起こす。

インフラマソームの活性化に応答して、カスパーゼに媒介されるガスダーミンD(GSDMD)の切断によってN末端断片(GSDMD-NT)が生成され、この断片が多量体化して細胞膜に孔を形成し、結果的に炎症性サイトカインが放出されて炎症性細胞死(パイロトーシス)が引き起こされる。Duらは、ヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞において全長型GSDMDとGSDMD-NTの両方がCys191にパルミトイル化として知られる脂質修飾を受けることを明らかにした。C191A変異型GSDMDは、パイロトーシスを誘導できなかった。一方、GSDMD-NTの多量体化にはパルミトイル化が必要であったが、全長型GSDMDの切断にはパルミトイル化は必要なかった。ヒト単球細胞株でNLRP3インフラマソームを活性化させると、GSDMDのパルミトイル化と切断の両方が促進されたが、C191A変異型GSDMDはパルミトイル化されなかった。細胞内のGSDMDのパルミトイル化は、ミトコンドリアの活性酸素種(ROS)産生が刺激されたときに促進された。インフラマソーム活性化因子の存在下でのノックアウト実験およびレスキュー実験では、パルミトイル化されたGSDMDがミトコンドリアのROS産生を引き起こし、それによってGSDMDのパルミトイル化が促進されるというフィードフォワードループが示唆された。全長型GSDMDは、パルミトイル化された場合のみ、GSDMD-NTと同様に孔を形成してパイロトーシスを誘導した。ヒト細胞では、GSDMDはパルミトイルトランスフェラーゼZDHHC5およびZDHHC9によって修飾された。インフラマソームの活性化に応答して、ROS依存的にプロテアソーム分解が阻害されるため、細胞内のZDHHC5およびZDHHC9の存在量は増加した。まとめると、これらのデータは、インフラマソームが活性化すると、全長型GSDMDとGSDMD-NTのCys191がROS依存的にパルミトイル化されることを示しており、著者らは、このパルミトイル化が孔形成のチェックポイントとして機能していることを提唱している。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2024年6月25日号

Editors' Choice

パルミトイル化が孔の形成を促進する

Focus

シナプス可塑性の微調整:記憶におけるWWC1の役割を読み解くことで、治療に新たな展望が開ける

Research Article

Gタンパク質共役受容体のエンドサイトーシスはβ-アレスチンシグナル伝達に時空間的バイアスを生み出す

最新のEditors' Choice記事

2025年03月11日号

感覚ニューロンから代謝への圧力

2025年03月04日号

胃がんを解明する

2025年02月25日号

甘党を鈍らせる

2025年02月18日号

幹細胞の健康は母親の腸から

2025年02月11日号

GPCRの新たなパートナーの発見