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パイロトーシスがダメージをコントロールする

Pyroptosis does damage control

Editors' Choice

SCIENCE SIGNALING
16 Jul 2024 Vol 17, Issue 845
[DOI: 10.1126/scisignal.adr5475]

Amy E. Baek

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org

P. Mehrotra, S. Maschalidi, L. Boeckaerts, C. Maueröder, R. Tixeira, J. Pinney, J. B. Cardás, V. Sukhov, Y. Incik, C. J. Anderson, B. Hu, B. N. Keçeli, A. Goncalves, L. Vande Walle, N. Van Opdenbosch, A. Sergushichev, E. Hoste, U. Jain, M. Lamkanfi, K. S. Ravichandran, Oxylipins and metabolites from pyroptotic cells act as promoters of tissue repair. Nature 631, 207-215 (2024).

パイロトーシス細胞からの分泌因子は創傷修復を促進しうる。

パイロトーシスは、組織炎症を促進することによって多様な作用を引き起こす炎症性サイトカインの分泌、なかでも強力なインターロイキン1β(IL-1β)の分泌を特徴とする溶解性細胞死の一種である。Mehrotraらは、パイロトーシスの過程で分泌される他の因子の作用とIL-1βの作用を区別するために、骨髄由来マクロファージがIL-1βまたはIL-1αを放出しないパイロトーシスモデル(Pyro−1)を用いた。Pyro−1関連の遺伝子特性と上清の解析では、コントロールと比べて、脂質に媒介されるシグナル伝達の変化、とりわけオキシリピンとプロスタグランジンE2(PGE2)の増加が明らかとなった。PGE2合成を阻害するために酵素シクロオキシゲナーゼ1および2(COX1およびCOX2)の可逆的阻害薬および不可逆的阻害薬を使用したところ、PGE2がパイロトーシスの過程で産生されることが示唆された。ガスダーミンD(GSDMD)欠損マウス由来マクロファージの解析では、パイロトーシス進行中のPGE2放出にはGSDMDに媒介される孔形成が必要であることが示された。Pyro−1の上清は初代培養マウス線維芽細胞およびマクロファージの遊走も促進した。マウスの結腸パンチ生検創傷治癒モデルでは、COX2阻害薬の投与は創傷治癒を弱めたが、創傷部にPyro−1上清を局所投与すると創傷修復が亢進した。これらの知見は、創傷治癒の炎症期にパイロトーシス細胞から放出される因子によって同時に引き起こされうる予期せぬ有益作用を明らかにするものである。

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