ミトコンドリアを囲む環

Ring around the mitochondria

Editors' Choice

SCIENCE SIGNALING
23 Jul 2024 Vol 17, Issue 846
[DOI: 10.1126/scisignal.adr8314]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: wwong@aaas.org

J. Pilic, B. Gottschalk, B. Bourgeois, H. Habisch, Z. Koshenov, F. E. Oflaz, Y. C. Erdogan, S. M. Miri, E. N. Yiğit, M. ş. Aydın, G. öztürk, E. Eroglu, V. Shoshan-Barmatz, T. Madl, W. F. Graier, R. Malli, Hexokinase 1 forms rings that regulate mitochondrial fission during energy stress. Mol. Cell 10.1016/j.molcel.2024.06.009, (2024).

ヘキソキナーゼ1は、ミトコンドリアの周りに収縮環を形成し、エネルギーストレスによって誘発される分裂を阻止する。

ヘキソキナーゼ1(HK1)はミトコンドリアに局在する酵素であり、グルコースのグルコース-6-リン酸(G6P)へのリン酸化を触媒する。G6Pはその後さまざまな経路を介してさらに代謝される。Pilicらは、エネルギーストレス時のHK1の非触媒的な役割を見出した。さまざまな細胞株および初代培養細胞において、グルコース欠乏に起因する細胞内アデノシン5′-三リン酸(ATP)濃度の低下により、GFP標識HK1と内在性HK1の両方が、ミトコンドリアを囲む環状構造を形成した。HK1の生成物であるG6P、ATPまたはグルコースの添加により、これらの構造は消失した。HK1によって形成された環は、ミトコンドリア-小胞体接触領域に位置するミトコンドリアを収縮させ、分裂因子のダイナミン関連タンパク質1(Drp1)と受容体とのミトコンドリア外膜での結合を妨げることによって、ミトコンドリア分裂を阻害した。HK1が環を形成する能力は、ATP結合部位の変異(ATPを枯渇させた細胞におけるHK1を模倣)によって増強され、ミトコンドリア結合ドメイン内に、Leu14などの特異的なロイシン残基を必要とした。グルコースを欠乏させたHeLa細胞では、ATP結合変異体の発現によって、トリカルボン酸回路の活性、酸素消費速度、細胞外酸性化速度が高まったが、環を形成できないL14A変異体の発現によっては総じてそのような増強は認められなかった。これらの結果は、エネルギーストレス時のミトコンドリア分裂の阻害および代謝再配線におけるHK1の非触媒的な役割を強調するものである。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2024年7月23日号

Editors' Choice

ミトコンドリアを囲む環

Research Article

キナーゼITKがCa2+に媒介されるスイッチを調節してTH17およびTregの細胞分化の均衡を保つ

T細胞シグナル伝達モチーフを組み込んだ抗腫瘍キメラ抗原受容体の作製

最新のEditors' Choice記事

2025年03月11日号

感覚ニューロンから代謝への圧力

2025年03月04日号

胃がんを解明する

2025年02月25日号

甘党を鈍らせる

2025年02月18日号

幹細胞の健康は母親の腸から

2025年02月11日号

GPCRの新たなパートナーの発見