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キナーゼITKがCa2+に媒介されるスイッチを調節してTH17およびTregの細胞分化の均衡を保つ

The kinase ITK controls a Ca2+-mediated switch that balances TH17 and Treg cell differentiation

Research Article

SCIENCE SIGNALING
23 Jul 2024 Vol 17, Issue 846
[DOI: 10.1126/scisignal.adh2381]

Orchi Anannya1, Weishan Huang1, 2, Avery August1, 3, 4, 5, *

  1. 1 Department of Microbiology and Immunology, College of Veterinary Medicine, Cornell University, Ithaca, NY 14853, USA.
  2. 2 Department of Pathobiological Sciences, School of Veterinary Medicine, Louisiana State University, Baton Rouge, LA 70803, USA.
  3. 3 Cornell Center for Immunology, Cornell University, Ithaca, NY 14853, USA.
  4. 4 Cornell Institute of Host-Microbe Interactions and Disease, Cornell University, Ithaca, NY 14853, USA.
  5. 5 Cornell Center for Health Equity, Cornell University, Ithaca, NY 14853, USA.
  6. * Corresponding author. Email: averyaugust@cornell.edu

Editor's summary

T細胞受容体(TCR)シグナル伝達の強度は、ナイーブT細胞が炎症性TH17細胞に分化するか抗炎症性Treg細胞に分化するかを決定する。Anannyaらは、マウスにおいて、TCRとの会合によって活性化されるキナーゼITKがこれらの細胞運命に影響するかどうかを調べた。ITKを阻害すると、アレルギー性炎症時の肺でTreg:TH17比が増大した。さらに、TH17誘導条件下で培養されたナイーブT細胞のITKを阻害すると、機能的にも転写的にもTreg細胞に似た細胞へと分化した。この細胞運命のスイッチは、Ca2+シグナル伝達を誘導するITKの能力に依存した。このように、ITKに依存してCa2+に媒介されるスイッチがTH17細胞とTreg細胞の均衡を微調整している。—Annalisa M. VanHook

要約

炎症性17型ヘルパーT(TH17)細胞と抗炎症性制御性T(Treg)細胞の均衡は、健康および疾患における免疫恒常性にきわめて重要である。ナイーブCD4+ T細胞のTH17細胞およびTreg細胞への分化はT細胞受容体(TCR)シグナル伝達に依存し、これはマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)およびCa2+シグナル伝達を刺激するインターロイキン2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)によって部分的に媒介される。本稿でわれわれは、ITK活性の非存在下において、TH17誘導条件下で培養されたマウスナイーブCD4+ T細胞がTreg転写因子Foxp3を発現し、TH17細胞へ発達しなかったことを報告する。さらに、in vivoでアレルギー性炎症時にITKを阻害すると、肺でのTreg:TH17比が増大した。このように転換されたFoxp3+ Treg様細胞は、抑制機能を呈し、分化した誘導性Treg(iTreg)細胞に似たトランスクリプトームプロファイルがみられたが、クロマチンアクセシビリティプロファイルはTH17細胞とiTreg細胞の中間であった。iTreg細胞と同じく、転換されたFoxp3+ Treg様細胞では、ミトコンドリアの酸化的リン酸化と解糖系、ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)シグナル伝達経路の活性化、およびTH17のパイオニア転写因子BATFの存在量に関連する遺伝子の発現が減少していた。このITKに依存するTH17細胞とTreg細胞の間の転換は、Ca2+シグナル伝達に依存したが、MAPKには依存しなかった。これらの知見は、ITKを介したTCRシグナル強度の微調整がTH17細胞とTreg細胞の均衡を調節するための戦略となる可能性を示唆している。

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