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T細胞シグナル伝達モチーフを組み込んだ抗腫瘍キメラ抗原受容体の作製

Generation of antitumor chimeric antigen receptors incorporating T cell signaling motifs

Research Article

SCIENCE SIGNALING
23 Jul 2024 Vol 17, Issue 846
[DOI: 10.1126/scisignal.adp8569]

Lakshmi Balagopalan1, *, Taylor Moreno1, †, Haiying Qin2, †, Benjamin C. Angeles1, Taisuke Kondo2, Jason Yi1, Katherine M. McIntire1, Neriah Alvinez1, Sandeep Pallikkuth1, Mariah E. Lee1, Hidehiro Yamane1, Andy D. Tran3, Philippe Youkharibache4, Raul E. Cachau5, Naomi Taylor2, Lawrence E. Samelson1, *

  1. 1 Laboratory of Cellular and Molecular Biology, Center for Cancer Research, National Cancer Institute, National Institutes of Health, Bethesda, MD 20892 USA.
  2. 2 Pediatric Oncology Branch, Center for Cancer Research, National Cancer Institute, National Institutes of Health, Bethesda, MD 20892, USA.
  3. 3 Laboratory of Cancer Biology and Genetics (CC R Microscopy Core), National Cancer Institute, National Institutes of Health, Bethesda, MD 20892, USA.
  4. 4 Cancer Data Science Laboratory, National Cancer Institute, National Institutes of Health, Bethesda, MD 20892, USA.
  5. 5 Integrated Data Science Section, Research Technologies Branch, National Institute of Allergy and Infectious Diseases, Bethesda, MD 20892, USA.
  6. * Corresponding author. Email: balagopl@mail.nih.gov (L.B.); samelsonl@mail.nih.gov (L.E.S.)
  7. These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞は、一部の種類のがんに対してのみ治療効果がある。下流のシグナル伝達分子が現在のCARに効率的に動員されないことに注目し、Balagopalanらは、代わりにこれらのシグナル伝達タンパク質のドメインをCAR自体に組み込んだ。ZAP70のキナーゼドメインを組んだCARチロシンキナーゼを生成すると、マウスでの抗腫瘍効果が現在のCAR T細胞よりも増強された細胞が得られた。したがって、CARチロシンキナーゼのシグナル伝達特性を探索することで、抗腫瘍T細胞の有効性を増強できる可能性がある。—John F. Foley

要約

キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、さまざまな血液がんの治療に用いられて成功を収めているが、副作用によりその可能性は限られている。今回、われわれはキメラアダプタータンパク質(CAP)とCARチロシンキナーゼ(CAR-TK)を開発し、細胞内ζ T細胞受容体(TCRζ)鎖を細胞内タンパク質ドメインに置き換えて、TCRζ鎖の下流のシグナル伝達を刺激した。CAPはアダプタードメインとZAP70のキナーゼドメインをもつが、CAR-TKはZAP70ドメインのみをもつ。われわれは、CAPおよびCAR-TKは、TCRζのシグナル伝達閾値を規定するステップと上流分子の抑制制御の両方をバイパスするため、CARよりも強力であろうという仮説を立てた。CAPは強力すぎて、in vitroで高い持続性のシグナル伝達を示した。対照的に、CAR-TKは、高い抗腫瘍効果を示し、従来のCD19-28ζ-CAR-T細胞と比較して、白血病NSGマウスにおける長期腫瘍消失を有意に増強させた。CAR-TKはキナーゼLckとは独立に活性化され、28ζ-CARと比較してリン酸化速度が遅く、シグナル伝達が延長された。Lck阻害はCAR-TK細胞の消耗を弱め、長期機能を改善した。したがって、CAR-TKの独特なシグナル伝達特性は、抗腫瘍キメラ受容体を発現するように設計されたT細胞のin vivoでの有効性を改善するために利用できる可能性がある。

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