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性に依存する自己免疫の重み
The sex-dependent weight of autoimmunity
SCIENCE SIGNALING
1 Oct 2024 Vol 17, Issue 856
[DOI: 10.1126/scisignal.adt4125]
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
Corresponding author. Email: wwong@aaas.org
B. Cordeiro, J. J. Ahn, S. Gawde, C. Ucciferri, N. Alvarez-Sanchez, X. S. Revelo, N. Stickle, K. Massey, D. G. Brooks, J. M. Guthridge, G. Pardo, D. A. Winer, R. C. Axtell, S. E. Dunn, Obesity intensifies sex-specific interferon signaling to selectively worsen central nervous system autoimmunity in females. Cell Metab., 10.1016/j.cmet.2024.07.017, (2024).
肥満は、多発性硬化症の女性患者とマウスにおいて大いに炎症を悪化させる。
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系(CNS)に浸潤してインターフェロン-γ(IFN-γ)や顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)など炎症促進性サイトカインを産生する1型ヘルパーT細胞(TH1)およびTH17細胞が媒介する、脱髄によって引き起こされる。MSの有病率は女性の方が高く、また最近のMS発生率の増加は肥満の増加と一致していることから、Cordeiroらは、女性におけるMSの自己免疫病理に肥満がどのように寄与しているかを調べた。プロテオミクス解析から、再発寛解型MSの女性患者の血清では、炎症経路に関連する数種のタンパク質が選択的に増加していることが明らかにされた。さらに血清中のIFN-γ量は、正常体重の男女患者または過体重の男性患者と比べ、過体重の女性患者で高値であった。実験的自己免疫性脳炎(EAE)モデルは、マウスに、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質の35〜55番目のペプチド(MOG35-55)を接種して作成したMSモデルである。MOG35-55注射前に高脂肪食を給餌して肥満を誘導すると、重症度および脱髄の程度は、雄マウスと比べて雌マウスの方が大きく悪化した。さらに、肥満の雌マウスでは肥満の雄マウスと比べ、IFN-γおよびGM-CSFの産生が増加したCD4+ T細胞サブセットのCNSへの浸潤、および増殖を含むTH1細胞応答の亢進が認められた。雌マウスでは食事誘発性肥満により血清中IFN-α量が増加し、これは下流の転写因子のリン酸化の亢進、CD4+ T細胞によるIFN-γ産生の増加、およびIFN応答遺伝子の発現亢進を伴っていた。雌マウスにおけるIFN-γ産生の増強および重症度の悪化のためには、体脂肪蓄積の増加、卵巣ホルモンの存在、およびT細胞のIFN-α受容体(IFNAR1)が必要であった。これらの結果は、多発性硬化症の女性患者およびEAEの雌マウスでは、その男性患者およびEAEの雄マウスと比べ、肥満が炎症をどのように大きく増悪させるのかについて、洞察をもたらすものである。